ウィニー・ルース・ジャッド
Winnie Ruth Judd (アメリカ)



ウィニー・ルース・ジャッドの旅券

 私が「虎の女(The Tiger Woman)」ことウィニー・ルース・ジャッドに初めて出会ったのは、牧逸馬氏による講談調の『世界怪奇実話集』においてだった。その後、『Death Scenes』という往年の検視写真を特集したビデオで、彼女の所業とされるバラバラ死体の現物を拝見。
「こんなキレイなおねえちゃんが、こんなエゲツないことしはったんかいな」
 と大いに驚き、事件に対する興味をより一層そそられたのであった。
 数年後、ジョイナ・ボーマズバック著『人体切断』を読み、この
事件には裏があることを知る。それを明らかにする前に、まずは事のあらましをお話しよう。

 1931年10月19日の正午頃のことである。ロサンゼルス駅の荷物受け渡し係が悪臭に気づいた。どうやら大小2つのトランクから臭ってくる。やがて小柄な女が若い男を伴って現れた。係員は訊ねた。
「トランクの中身は何ですか?」
「身の回りのものです」
「他に何か入ってやしませんか?」
 当時、禁制品の鹿肉を持ち込む輩が多かった。これもそれだと思ったのだ。
「入ってません」
「おかしいですな。では、この臭いは何でしょう」
「私には臭いません」
 これが臭わないわけはないだろう。しかも、床には何やら液体が滲み出し、蠅がたかっている。連れも男も、
「たしかに臭いますね」
 もっと近寄ってみたらどうですと促されて、さすがに彼女も臭いを認めた。
「中を拝見させてくれませんかね」
 彼女はうろたえるでもなく平然と、
「鍵は夫が持っているんです」
 そして、夫に会いに出掛けたまま、二度と戻ってこなかった。
 トランクの中には2人の女性の遺体が入っていた。共に銃で撃たれており、1人は大きなトランクに、もう1人は切断されて、頭と上半身、膝から下の両脚が小さなトランクに収納されていた。
 あれ? 下半身は?
 夜になって、女性用の洗面所にスーツケースが放置されているのが発見された。恐る恐る開けてみると、案の定、中身は残りの部分だった。



事件を伝える当時の新聞

 被害者の身元はすぐに割れた。トランクの中に2人の写真が入っていたからだ。
 大きなトランクに入っていたのはアグネス・アン・ルロイ。アリゾナ州フェニックスのグルナウ・クリニックでX線技師として働いていた。
 小さなトランクとスーツケースに分納されていたのはヘドヴィグ・サミュエルソン
愛称は「サミー」。かつてはアラスカで教師をしていたが、結核を患い、そこで知り合ったアンと共にフェニックスにやって来たのだ。転地療養というやつである。2人は同棲し、生活費はアンが稼いでいた。
 ここまで判ればトランクを置き去りにした「小柄な女性」を特定するのは簡単である。かくして、2人の親友だったウィニー・ルース・ジャッド、またの名を「虎の女」は全国指名手配されたのだった。

 ルースを「虎の女」と命名したのは、もちろんマスコミである。ブラックダリア事件の項でも触れたが、部数競争に鎬を削る新聞にとって、本件のような猟奇事件は格好の題材だ。うら若き女性2人がトランク詰めにされて1人はバラバラ。しかも、犯人はとびきりの美人である。
 え? まだ犯人かどうか判らないって?
 いいや、犯人なの!
 その方が面白いの!
 報道は過熱し、事件の翌日にはもうルースの名が一面を飾っていた。警察によりリークされたものから憶測に至るまで様々な情報が飛び交い、中には、
「彼女は被害者の肉をペットの猫に食べさせた」
 などというトンデモないガセネタまで現れた。こうした根も葉もないことを積極的に記事にしたのはハースト系の新聞であったことは云うまでもない。
 以上から判る通り、彼女は逮捕される以前に予めマスコミにより有罪を宣告されてしまっていたのである。



ウィニー・ルース・ジャッド

 事件の概要を知り、誰もが思ったことは「共犯者がいるのではないか」ということだ。身長165cm、体重47kgの華奢な女が1人で成し遂げられたとは思えないからである。被害者2人は彼女よりも大柄なのだ。
 まず最初に疑われたのは、彼女と共に荷物を取りに来た実弟のバート・マッキネルである。しかし、彼には完璧なアリバイがあった。事件の当日に姉に頼まれて荷物を取りに行っただけだったのだ。
 夫のウィリアム・ジャッドも疑われたが、やはり彼女を手伝うことは物理的に不可能だった。
 では、いったい誰が手伝ったのか?
 この答えは後に詳述する。

 事件から4日が過ぎた23日、夫による自首の呼び掛けに応じて「虎の女」は遂に姿を現した。場所は電話での話し合いで葬儀場が指定されたが、そこには警察や弁護士、夫の他に、山ほどの記者やカメラマンが押し寄せた。誰かがリークしたらしい。
 実物のルース・ジャッドは「虎の女」とは程遠かった。げっそりとやつれて痩せ細り、 夫の姿を見るなり泣き崩れた。
「ごめんなさい、あなた。どうしようもなかったの。撃たなければならなかったのよ」
 彼女の左手は負傷し、壊疽になりかけていた。彼女の弁明によれば、2人の殺害は正当防衛だった。

「あの晩、或る看護婦のことで2人と口論になりました。サミーがいきなり銃を握り、私の左手を撃ちました。彼女と揉み合った拍子に銃が落ちました。すると、今度はアンがアイロン台を掴んで殴り掛かってきました。私は咄嗟に銃をつかみ、引き金を引きました。弾はサミーに当たりました。アンはなおも殴り掛かってきたので、銃を撃つよりほかありませんでした」

 ところが、弁護人のポール・シェンクは正当防衛を主張しなかった。起訴事実については争わず、心神喪失による無罪を主張したのである。しかし、陪審員は責任能力には問題なしと判断。結果、彼女は第一級殺人で有罪となり、死刑を宣告されたのである。
 つまり、ルースが死刑を宣告されたのは戦法を誤ったからなのだ。もし正当防衛を主張して起訴事実を争っていたならば、せいぜい第二級殺人で、長くても15年の刑で済んだだろうと云われている。



ジェイナ・ボーマズバック著『人体切断』

 時は過ぎて1996年、ジョイナ・ボーマズバックという記者が「虎の女」に再びスポットライトを当てた。今日でもルース・ジャッドの名は、例えば高橋お伝や阿部定のような「毒婦」として語り継がれている。ところが、ボーマズバックの赴任先たるフェニックスでは勝手が違った。誰も彼女のことを「毒婦」だと思っていなかったのだ。曰く、
「彼女は或る人を庇ったんだ」
「ハメられたんだよ」
「実際にやったのは、町の大物なんだ」
 調査の結果、たしかに彼女をハメようとする謀略が見えてきた。では、誰がハメたのか? それが前述の「共犯者」である。

 事件を最初から順序立てて説明しよう。
 当時26歳だったルース・ジャッドは、牧師の娘としてインディアナ州ダーリントンで生まれた。19歳の時に22歳も年上の医師、ウィリアム・ジャッドと結婚したが、その生活は楽ではなかった。夫がモルヒネ中毒だったのである。まともな働き口などある筈がなく、鉱山の嘱託医として各地を転々と渡り歩いた。
 やがてメキシコで結核を患った彼女は、カリフォルニアのサナトリウムで療養した後、空気の乾燥したフェニックスに単身で移り住んだ。夫も後から来る予定だったが、職がなかなか見つからない。自活しなければならなくなった彼女はタイプを習い、グルナウ・クリニックで働き始めた。そこでX線技師をしていたのがアグネス・アン・ルロイである。いろいろあって、ヘドヴィグ・サミュエルソンを加えた3人は同じアパートに暮らすようになった。しかし、共同生活はうまく行かず、結局、ルースが出ることとなった。

 諸君も薄々お気づきかと思うが、アンとサミーはレズビアンだった。ルースは気づいていたし、職場の者たちも気づいていた。しかし、当時は同性愛はタブーである。だから、陰で噂するだけだった。
 また、アンとサミーは或る男から経済的な援助を受けていた。それはどうやら彼と仲間たちが酒を飲み、乱痴気騒ぎをする場所を提供する対価であったらしい。性的交渉まであったのかどうかは不明だが、まあ、おそらくあったのだろう。そして、この男こそが「共犯者」と疑われる人物なのだ。ジャック・ハロランである。

 ハロランはいわば「町の有力者」というやつである。製材会社を経営し、商工会議所の役員を務め、ロータリー・クラブを通じて政治家や法律家にも顔が効く。しかし、その裏では禁酒法など何処吹く風で、毎晩のように飲んだくれて、女遊びに惚けていた。妻も子もいたが、愛人もいた。その愛人がルース・ジャッドだったことがそもそもの悲劇の始まりである。

 以下は死刑判決後のルースの告白に基づく事件の全貌である。
 発端はルースがハロランにルシール・ムーアという同僚を紹介したことだった。彼女が「狩りに行きたいの」というので「ハロランさんに連れ行ってもらいなさいよ」と引き合わせたのである。これがアンとサミーの逆鱗を招いた。というのも、ルシールは梅毒だったのだ。

「ハロランさんに梅毒女を引き合わせるなんてどういうつもりよ!」
「だって、彼女、狩りに行きたいって云うから…」
「あんた、彼の性格を知ってるでしょ? 狩りに連れて行くだけで済むわけがないじゃない! どうするつもりよ!」
「どうすると云われても…」
「ハロランさんにバラすわよ。あんたが梅毒女を紹介したって」
「やめてよ!」
「あたし、知ってるんだからね。あんたが引っ越してから、彼が毎晩訪ねて来てるそうじゃないの」
「だからどうだっていうのよ! あたしだってみんな知ってるんだから!」
「何を知ってるのよ」
「クリニックではみんな噂してるわよ。あんたとサミーがデキてるって。あんたたちは変態だって」
「なによ! あんただって不倫してるじゃない! 旦那にバラしてやるわ!」
「まあ! じゃあ、云いますけどね、あんた、レントゲンの電圧をいっぱいに上げたでしょう? あれって、あんたの後釜に入った技士を陥れるためでしょう? クビになりたくないもんだから、あんたは患者のからだに穴を開けようとしてるのよ、この人殺し! あんたなんかクビになって路頭に迷えばいいのよ!」

 サミーが銃を向けたのはこの時である。ルースは必死に抵抗したが、左手を撃たれた。咄嗟にそばにあったパン切りナイフを掴み、サミーに斬りつけた。
 この傷はサミーのバラバラ死体に残っていた。また、ルースの指紋がついたパン切りナイフは、問題のトランクの中に入っていた。
「撃つのよ、サミー! 撃つのよ!」
 そう叫ぶと、アンがアイロン台で殴り掛かってきた。何度殴られたか判らない。ルースは必死でサミーの銃を掴むと引き金を引いた。引き続けた。気がついたら2人は倒れていた…。

 真相は判らない。全くの作り話なのかも知れない。しかし、その「動機」に関しては、検察が法廷で主張した「愛人(ハロラン)を巡る嫉妬」よりも説得力がある。嫉妬ぐらいではなかなか人は殺せない。しかし、レズビアンにレントゲン、不倫に梅毒と、これだけマイナス要素が出揃うと「殺し合いもむべなるかな」と合点してしまうのである。



殺害現場だとされる寝室

 ルースが我に帰ると、2人は台所で倒れていた。
 殺してしまったんだわ!
 動顛した彼女はそのまま自宅へと走った。そこにジャック・ハロランが現れた。彼は酔っぱらっており、彼女の話を真剣に受け取らなかった。
「2人を殺したって? またまたあ」
「なら見せてあげるわよ」
 台所の惨状を目の当たりにしてハロランは蒼醒めた。サミーの遺体を抱えると、寝室に運んでベッドに寝かせた。
 この部分はルースの告白の真実性を裏づけている。警察が捜索した時、ベッドのマットレスがなくなっていたのだ。そして、寝室の床には血痕があった。そのために寝室が犯行現場と推定されたのだ。検察は2人は睡眠中に頭を撃ち抜かれて殺されたのだと主張した。しかし、遺体を運んだのならば、その主張は通らないのである。
 また、マットレスがなくなっていたことは、ルースに共犯者がいたことを物語っている。彼女は車を持っていないのだ。

 ルースも左手を撃たれていることを知ったハロランはこう云った。
「ブラウン先生に診てもらうといい」
「いやよ。通報されたらどうするのよ」
「大丈夫だ。通報しないよ」
 その時、ルースはハロランが「ブラウン先生」の弱みを握っていると云っていたことを思い出した。
「彼を縛り首にできるようなネタを握っているんだ」
 ハロランはブラインドを下げると何処かに電話を掛けた。この時、ブラインドに血に染まった親指の指紋がついた。この指紋は捜索の時に発見されていたが、鑑識が到着した頃には切り取られて、闇に葬られてしまった。



ヘドヴィグ・サミュエルソンの遺体


ヘドヴィグ・サミュエルソンの遺体

 サミーを解体したのは、おそらく「ブラウン先生」だろう。左写真を見ていただければ判るかと思うが、縫い合わせて原形を再現できるほどに綺麗に解体されている。シロウトの技とは思えない。増してやルースは左手を負傷していたのだ。
 なお、「ブラウン先生」ことチャールズ・W・ブラウンは1933年6月に心臓発作で死亡したが、遺体の右手には包丁が握られていた。自殺しようとして、その精神的ストレスから発作を起こしたのではないだろうか? だとすれば、どうして自殺しようと思ったのか? ルースを陥れたことへの自責の念ゆえではなかったか?

 とにかく、2人の遺体はアンの大きなトランクに詰められた。最初はトランクは1つだったのだ。ハロランはルースに云った。
「これを持ってロサンゼルスに行け。駅にはウィリアムスという男が待っている。後は彼が始末してくれるから」
 しかし、トランクが重過ぎて運送屋が受け取ってくれなかった。これでは列車に乗せられないと。仕方がないのでルースがバラバラの方を自分のトランクとスーツケースに分納した。この際に「何か気持ち悪いものが落ちた」。おそらく内臓である。このことはサミーの内臓に足りない部分があったことと符合する。

 どうにか駅まで運び、ロサンゼルス行きの夜行に乗ったルースだったが、駅には誰も待っていなかった。彼女は2時間もうろうろした挙句、已むを得ず実弟に助けを求めた。朝にロサンゼルスに着いたにも拘わらず、トランクを取りに来たのは正午過ぎだったのはそういうわけだったのである。
 つまり、ルースはハロランにハメられたのだ。ウィリアムスなどという男はハナからいなかったのである。

 以上がルースが語る「真相」である。矛盾が一つもない。一方、検察の主張は矛盾だらけだ。にも拘わらず検察の主張が通ったのは、前述の通り、弁護人が起訴事実を争わなかったからである。
 ちなみに、ルースの弁護人ポール・シェンクを選定し、費用を支払ったのは新聞王としてお馴染みのウィリアム・ランドルフ・ハーストだった。彼がどういうつもりでそんなことをしたのか不明だが、なにやら胡散臭いものが感じられるエピソードである。

 とにかく、掘り起こせば掘り起こすほど胡散臭い事件である。
 例えば、事の発端になったルシール・ムーアは、裁判中にフェニックスから逃げ出した。電話で脅迫されたらしい。
「お前はしゃべりすぎた。フェニックスを出ろ。その方が身のためだ」
 また、陪審員の中にも疑惑の人物がいる。ダン・クライマンというアリゾナ州メイサの市長も務めたことがある人物である。陪審員たちはルースが一言も証言しないことに不満を抱いていた。共犯者がいたと確信していた彼らは、そのことをルースの口から聞きたかったのだ。だからクライマンのこんな提案に乗ってしまった。
「彼女を死刑にしようじゃないか。そうすれば彼女もしゃべらざるを得なくなるだろう」
 つまり、陪審員は検察側の主張を信じたから死刑を評決したわけではないのだ。疑問に思っていたから死刑を評決したのである。無茶苦茶な話である。

 ルースは1933年2月7日に処刑されることになっていた。しかし、クライマンに騙されたことを悟った陪審員をはじめとして、多くの市民が死刑判決に疑問を抱いていた。全国から何千通という減刑嘆願書が寄せられた。その中にはルーズベルト大統領夫人やヘンリー・フォードの名前もあったという。結果、再審が実現したわけが、事前の審問ではあんなに冷静に「真相」を語っていた彼女は、法廷では理性を失い半狂乱だった。
「ジャック・ハロランのくそったれ! あいつの頭を叩き割って、脳ミソをオートミールみたいにぶちまけてやる!」
 彼女は「心神喪失」と認定されて、精神病院に送られた。
 一方、遂に共犯者として起訴されたハロランだったが、判事は驚くべき判定を下した。
「ミセス・ジャッドの行為は正当防衛である。故に、これに加担する行為は如何なる犯罪も構成しない」
 つまり、ルースの裁判においては正当防衛が認められなかったにも拘らず、ハロランの裁判では正当防衛が認められたのである。かくしてジャック・ハロランは無罪放免となった。まったく無茶苦茶な話である。

「虎の女」ことウィニー・ルース・ジャッドはその後、実に7回も脱走し、そのたびに世間を大いに賑わせたが、それらはすべて何らかの抗議に基づくレジスタンスだった。たいていは数日で自ら病院に戻っている。「ただいま!」とか云いながら。
 1962年10月8日の最後の脱走が最も長く、逃亡生活は6年半にも及んだ。この間、彼女は裕福な老婦人の介護役として住み込みで働き、おそらく生涯で最も優雅なひとときを過ごした。そして、この時期の交友関係が釈放運動へと繋がり、1971年にようやく自由の身となった。マリアン・レインと名を変えた彼女は、事件については貝のように口を閉ざしてしまった。もう思い出したくもないという。そうだろう。39年も閉じ込められていたのだから。そして1998年10月23日に死亡。93歳だった。

 最後に、この事件には更なる疑惑があることを付記しておこう。それは「本当にルースが殺したのか?」という疑惑だ。
 サミーはルースが殺したとして、アンはハロランが来た時にはまだ息があったのではないかという疑惑があるのだ。というのも、当初の新聞の報道では、サミーの銃創は25口径だったのに対して、アンのものは32口径とされていたのである。それがいつの間にか25口径で統一され、裁判では口径については一切触れられなかった。当初の報道が真実ならば、アンは別の人物により殺された可能性があるのだ。

 また、そもそもルースは誰も殺していない、という説もある。彼女は自分が殺したのだと信じ込まされたのだと。この説を補強するのが、アンとサミーに対して行われていた不明瞭な「経済援助」である。酒を飲む場所を提供するだけで「経済援助」したりするだろうか? ひょっとしたら麻薬取引か何かに利用されていたのではないか? それとも、他の何か、例えば違法な堕胎手術を斡旋していたのではないか? ハロランが握っていた「ブラウン医師の弱み」とはこのことではなかったか? そして、アンとサミーは口封じのために殺されたのではなかったか?
 謎の多い事件である。ただ、本件に「町の有力者」が関与し、そのことの隠蔽工作が行われていたことだけは紛れもない事実なのである。


参考文献

『人体切断』ジェイナ・ボーマズバック著(中央アート出版社)
週刊マーダー・ケースブック53(ディアゴスティーニ)
『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)
『世界怪奇実話IV/親分お眠り』牧逸馬著(社会思想社)


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