ジャンヌ・ムッサン
ピエレット・ピション

Jeanne Moussan & Pierette Pichon (フランス)


 

 コリン・ウィルソン著『現代殺人百科』には、まるでレズビアン吸血鬼映画のような事件が紹介されている。フランスではレズビアン吸血鬼映画が多く製作されているが、この事件と関係があるのかまでは判らない。

 1981年7月、ボージョレ地方の林道で男の死体が見つかった。名前はラウール・デュプレシス。リヨンの製鉄工場に勤めていた。2種類のナイフで数カ所刺されている。近くには女物のヘアピンが落ちていた。
 傍には彼のフィアットが停められていたことから、警察はこのように推理した。その日は7月14日のパリ祭で、道にはヒッチハイカーが大勢いた。彼はおそらく2人のヒッチハイカー(少なくとも1人は女)に殺られたのだろう。
 やがて警察はミニスカートの2人の少女を付近で見かけたとの情報を得、遂に彼女たちを拾ったドライバーを探し当てた。彼によれば、2人はマコンから来たという。その線で捜査は進められ、間もなくその少女たちがピエレット・ピション(18)とジャンヌ・ムッサン(16)であることが判明した。

 2人はいずれも中流家庭の娘で、犯行当時は入院中だった。あっちの方の病院かなとも思ったが、『現代殺人百科』には「胃病」とだけ記されている。とにかく、入院中に知り合った2人はパリ祭の日に抜け出してハメを外すことにした。聞き込みにより、2人が肉切りナイフを購入した店も特定された。

 2人はマコンに戻ったところを逮捕された。凶器のナイフはジャンヌが持っていた。柄の根元には血がこびりついている。犯行を認めた2人は、当初から誰かを殺して金を奪うつもりだったと告白した。
 トンデモねえミニスカート2人組である。
 自供によれば、犯行は色仕掛けだった。いいことしましょと森に誘い、鼻の下を伸ばしているところでヘアピンを落とす。それを男が拾おうとしたところを、背中めがけてザックリとナイフを振り降ろしたのである。2人は彼が失血して死んで行くさまを1時間半に渡って眺めていたという。そして、4フランぽっちを奪ってその場を去った。

「精神科の医師の診断によると、2人はかなり無軌道な生活を送っていて、サド的行為とその他さまざまな変態行為でしか性的満足を得られない、とのことだった」

 と記されるのみで、「その他さまざまな変態行為」がどのようなものであったかは判らない。興味津々である。
 なお、2人は未成年だったために、ごく短期間の拘留で釈放されたらしい。それでいいのか?


参考文献

『現代殺人百科』コリン・ウィルソン著(青土社)


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