サムの息子 |
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それは1976年7月29日に始まった。ニューヨーク市北ブロンクスでの出来事である。夜中の午前1時頃、2人の女性が停車中の車の中でおしゃべりをしていた。薬剤師のドナ・ローリア(18)と準看護婦のジョディ・バレンティ(19)である。ボーイフレンドの話をしていたらしい。熱心なあまりに男が近づいて来たことに気づかなかった。 |
おまえに女嫌いと呼ばれて、おれはひどく傷ついた。ちがうぞ。 |
おれを止めるには殺すしかないぜ。よくきけよ、ポリスども。さっさとおれを撃て。撃ち殺さないのなら、おれの前にあらわれるな。さもないと命はないぞ! |
おれは狩りが大好きだ。通りをうろつき獲物をさがす。うまい肉はないかとな。クイーンズの女が一番かわいい。あの女たちの飲み水になりたい。おれは狩りのために生きている。親父の血のために。 おれは世界中のやつらとやりたい。人間が大好きなんだ。でも、おれはこの世の生き物じゃない。おれをヤフーの世界に帰してくれ。 クイーンズの人々へ。 |
さようなら。おやすみ。 |
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1ケ月半後の6月1日、『デイリー・ニュース』紙のジミー・ブレズリン記者のもとに同じ筆跡の手紙が届いた。 |
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担当刑事は早速、ヨンカーズ警察に電話した。 |
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問題は動機だが、彼は悪魔に唆されたのだと弁明した。ご近所さんのサム・カーが飼っている黒いラブラドル犬(彼が苦情の手紙を送りつけ、銃撃したあの犬。名前はハービー)に齢三千歳の悪魔が取り憑き、毎晩のように吠えて彼に殺しを命じたというのだ。しかし、それは嘘八百であることが今日では判明している。ロバート・K・レスラーは彼に面接した時のことを著書『FBI心理分析官』の中でこのように記述している。 |
参考文献 |
『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社) |