レイモンド・アルマナスコ
Raymond Armanasco (オーストラリア)


 ここはオーストラリア西部の都市パース。牛乳配達人のレイモンド・アルマナスコはほとほと困り果てていた。カミさんとの仲がうまく行っていないばかりか、6人の子供のほとんどがカミさんの側についてしまっているのだ。味方してくれるのは9歳のエルシー・ローズただ1人。肩身が狭いったらありゃしない。半ばノイローゼに陥ったアルマナスコは強攻策に打って出る。だけど、みんなはマネしちゃダメだよ。

 1950年10月某日、アルマナスコは愛しい愛しいエルシー・ローズを友人に預ける。
「どこかに出掛けるのかい?」
「ちょっと気ままに小旅行」
 翌朝、隣人がアルマナスコ宅を訪ねると、皆殺しだからさあ大変。カミさんと5人の子供はいずれも頭を叩き割られた上に、喉を掻き切られていたのだ。外部から侵入した形跡はない。強盗の痕跡もない。ただカミソリとハンマーだけ残されていた。
 現場に急行した捜査員は、屋根裏から奇妙な音がすることに気づいた。
 なんだい? ネズミかい? それにしちゃ大きな音だな。
 天井を見上げると、漆喰の粉がポロポロと落ちて来る。不審に思って屋根裏に上がると、居やがった居やがった。犯人が居やがった。それは毛布に包まるアルマナスコだった。食料を大量に持ち込んでいたこのおたんこなすは、熱りが冷めるまでしばらく屋根裏に籠城するつもりだったのだ。
 呆れるねえ。
 終身刑です。

(2008年7月16日/岸田裁月) 


参考文献

『THE ENCYCLOPEDIA OF MASS MURDER』BRIAN LANE & WILFRED GREGG(HEADLINE)


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