ピーター・グリフィス
Peter Griffiths (イギリス)



ピーター・グリフィス

 1948年5月15日、イングランド北部ブラックバーンのクイーンズパーク病院は早朝から大騒ぎだ。小児病棟のベッドからジューン・アン・ディヴァニー(3)が何者かに連れ去られていたのである。やがて300mほど離れた公園で幼女の無惨な遺体が発見された。性的に暴行された上、頭を叩き割られている。なんということであろうか。周辺住民はただただ呆れ返るばかりだった。

 現場にはいくつかの痕跡が残されていた。まず、小児病棟の床には靴下履きの足跡が確認された。そして、何よりも重要だったのは、薬瓶に残されていた指紋である。幼女を抱きかかえる際に犯人は薬瓶を動かしている。医師や看護婦の指紋を除けば、それは犯人のものに間違いなかった。

 かくして犯人を特定するに足りる証拠は確保された。次に警察がするべきことは、付近住民の指紋の採取である。ブラックバーンには16歳以上だけでも4万7千人近くが住んでいる。そのすべての指紋を採取して、照合したというのだから気が遠くなる話だ。しかし、苦労は無駄にはならなかった。3ケ月後に「No. 46253」が遂に一致したのだ。指紋の持ち主の名はピーター・グリフィス(22)。製粉工場勤務の元警備員だった。

 ただちに逮捕されたグリフィスは、このように供述した。
「あまりに泣き叫ぶので、頭を壁に叩きつけて黙らせました」
 あまりに非情な犯行である。まともな人間の所行とは思えない。弁護人は当然の如く精神異常を主張したが、処罰感情が勝ったのだろう、陪審員はわずか23分の協議で有罪を評決。非情なるペドフィリアは同年11月に絞首刑に処された。

(2008年6月10日/岸田裁月) 


参考文献

『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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