レイモンド・モリス
Raymond Morris (イギリス)



焼かれるレイモンド・モリスのオースチン

 1967年8月19日、イングランド中部ウォルソールの大通りで、クリスティーン・ダービー(7)がグレイの車に乗った男に誘拐された。間近で犯人を見た子供たちによれば、その言葉には地元の訛りがあったという。
 しかし、捜査は一向に進展せず、やがて最悪の結末を迎える。3日後に現場から20kmほど離れた荒地で、強姦された彼女の遺体が発見されたのだ。死因は絞殺だった。そばには車のタイヤ痕がはっきりと残っていた。

 やがて、事件の数日前から現場付近でグレイの車がたびたび目撃されていた旨の情報がいくつも寄せられた。車種は概ね一致していた。オースチンA55かA60。犯人の車と見て間違いないだろう。
 この情報を元に警察は、同じ車種約2万3千台の所有者全員を尋問して回った。しかし、これといった成果は得られず、1年余りが経過した。

 1968年11月初め、同じウォルソールの街中で、10歳の少女があわや誘拐されそうになるという事件が発生した。車はグレイではなかったが、手口は前回とまったく同じだ。このたびは目撃者がナンバーを控えていた。かくして、その所有者であるレイモンド・モリス(29)は逮捕されたのである。
 彼の前の車は、グレイのオースチンA55だった。それだけではない。彼は2年ほど前に少女をイタズラしたかどで書類送検されていた人物だったのだ。ホンボシと見て間違いないだろう。

 取調べに対してモリスは、クリスティーンが誘拐された日のアリバイを主張して譲らない。その日は妻と買い物に出掛けていたの一点張りだ。妻もこれを裏づける。あの人の云うことに嘘偽りはございません。ところがどっこい、家宅捜査で少女の淫らな写真がいくつも発見されると、妻は前言を翻した。私の記憶違いでした。誠に申し訳ありません。
 その写真の被写体は、彼女の姪だったのだ。
 目撃証人たちも1人残らずモリスのことを指差した。かくして有罪となったモリスは、終身刑を宣告された。

 なお、モリスはこの他にも2人の少女を殺害したことが疑われている。1965年9月8日に失踪したマーガレット・レイノルズ(6)と、同年10月30日に失踪したダイアナ・ティフト(5)である。2人の遺体は1966年1月12日に同じ場所で発見された。そこがクリスティーンの発見現場でもあったことから疑われているわけだが、モリスは頑なに口をつぐんだままでいる。

 性には寛容な私だが、ペドフィリアにだけは寛容にはなれない。そういう輩を見かけると「死ねばいいのに」と本気で思う。思うのは勝手だ。後はてめえらで勝手にやって、とっとと裁かれて下さい。

(2008年12月11日/岸田裁月) 


参考文献

『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)


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