エリファスィ・ムソミ
ELIFASI MSOMI (南アフリカ)


 

「呪いのためには血が必要だった」

 こう嘯くエリファスィ・ムソミの職業は呪術師だ。絵描きが絵の具を必要とするように、血が必要だから殺したというのだ。犠牲者は2年ほどの間に15人に及ぶと見られている。

「俺に責任はない。トコロッシュが悪いんだ」

 トコロッシュ(tokoloshe)とは、アフリカの部族の間で信じられている悪魔のようなものらしい。「トコロッシュが血を欲したから殺した。だから、俺には責任はない」という理屈である。

 最初の犯行は1953年8月のこと。何の儀式だかは知らんが、恋人が見ている前で少女を犯し、おまけに刺し殺してしまったのだ。恋人は当然ながら警察に通報。お縄になったムソミはトコロッシュの手引きで脱走し、お礼を兼ねてせっせと殺すハメになる。
 手口はいつも決まっていた。口入れ屋と称して地方の村落に赴き、奉公先を見つけてやるからと子供たちを預かるのだ。そして、刺し殺してしまう。しばらくしてから村落に舞い戻り「いい奉公先が見つかりましたよ」などと親を安心させて、なにがしかの金をちょろまかすのである。
 悪魔とお知り合いの割には随分みみっちい犯行だ。

 1955年4月、つまらぬ窃盗でお縄になったムソミは、またしても脱走に成功する。ところが、この辺りで命運が尽きたようだ。翌月に三たびお縄となり、死刑を宣告されたのである。1956年2月10日に死刑は無事に執行されるが、周辺の村落ではトコロッシュがまた逃がすのではないかと心配されていたという。

(2008年7月25日/岸田裁月) 


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)


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