チャールズ・シュワルツ
Charles Schwartz (アメリカ)


 カリフォルニア州バークレー在住の自称発明家、チャールズ・シュワルツは金に困っていた。そこで自らに18万5千ドルの生命保険をかけて死ぬことにした。もちろん、死ぬのは彼ではない。「実験助手募集」の広告に応募してきたG・W・バーブに代わりに死んでもらうのだ。シュワルツはとりあえずバーブを撲殺すると、指紋を酸で焼き、両眼を抉り出した。瞳の色が違うからだ。そして、やっとこで右上部の臼歯を抜く。これでおいらと同じだ。身長が7cmも高いのが気になるが、まあ、焼けば縮むだろう。バレやしまい。さあて、これで準備は終わった。実験室に火を放つとシュワルツは随徳寺。1925年7月25日のことである。

 犯行はカミさんにも内緒で、シュワルツは事前に己れの写真をすべて処分していた。身元確認を困難にするためである。ところが、このことにより却って疑われる結果となった。また、間抜けなシュワルツはネガを処分していなかった。これでは写真を処分した意味がない。
「耳の形が違うぞ。ホトケはやっこさんじゃないな」
 臼歯も最近抜かれたばかりであることが判明。早くも身代わり殺人であることが露見してしまった。
 指名手配されていることを知ったシュワルツは一巻の終わりを悟る。潜伏先で拳銃自殺。このたびの遺体は紛れもなくシュワルツ本人だった。

 なお、シュワルツが方々に売り歩いていた「発明」とは「人工シルクの製造法」。そのサンプルは本物と見分けがつかない。つまり、本物のシルクだったのだ。彼の「実験室」にはガスも水道も引かれていなかった。発明家どころか単なるペテン師だったのである。

(2008年7月17日/岸田裁月) 


参考文献

『世界犯罪百科全書』オリヴァー・サイリャックス著(原書房)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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