ジョン・ウェブスター
John W. Webster (アメリカ)



ジョン・ウェブスター

 マサチューセッツ医科大学の化学・鉱物学教授で、ハーバード大学の非常勤講師でもあったジョン・ウェブスターには収入と釣り合わない趣味があった。高価な鉱物の蒐集である。あれも欲しい、これも欲しいと手を出して、気がついたら借金で首が回らなくなっていた。生活費にも窮するようになったウェブスターは、コレクションを担保にして金を借りようとした。これにかつての同僚、ジョージ・パークマンがいちゃもんをつけた。既に教授の職を退いていた彼は、ウェブスターに多額の金を貸していたのだ。
「あんたのコレクションはワシへの借金のカタになってるんとちゃうんかい」
「いや、その、金がなくて困っておりまして」
「知るか、ボケ。こうなったら耳を揃えて返してもらわなあきまへんな」
「えっ、だから金が」
「ほな、コレクションを頂きますわ。換金して、余るようでしたらお返しします。まあ、足りひんと思うけどね」
「そそそそれだけはご勘弁」
「あんたんとこ置いといたら何されるか判らへん。抵当権実行や」
「そんなこと、そんなことさせてたまるかあ!」
 気がついたら近くにあった薪ざっぽでパークマンを殴り殺してした。 それにしても、どうして金貸しだと大阪弁になるのだろうか? 謎である。

 さあて、金貸しを殺してしまったウェブスターは慌てた慌てた。場所は大学の研究室である。迂闊には運び出せない。守衛に見つかってしまう。どうしようどうしようとまるでチンチラのようにグルグルと回りながら思案し、ここで始末するしかないとの結論に至った。とりあえずバラバラにして、実験用のボイラーで焼却するのだ。一刻の猶予もない。早速このイヤな仕事に取り掛かった。時は1849年11月の晦日のことである。

 やがてジョージ・パークマンの失踪が報じられた。
 守衛のエフレイム・リトルフィールドには心当たりがあった。失踪の当日にパークマンがウェブスター教授の研究室に入るのを目撃していたのだ
。その夜遅くまで研究室のボイラーから黒煙が立ち上っていたのも奇妙である。そんなに研究熱心な人ではないのだ。もしやと思って研究室に立ち入り、ボイラーを開けると、中には半分焦げた足が入っていた。
 警察の捜索により、焼け焦げた人間の部品が続々と発見された。入れ歯からパークマンであることが確認されて、罪を認めたボンクラ教授は絞首刑に処された。


参考文献

『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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