ローン・アクウィン
Lorne J. Acquin (アメリカ)


 それは1977年7月11日未明のことである。コネチカット州プロスペクト、センダー・ヒル・ドライヴの住民たちは炎が燃え上がる音と臭いに起された。窓から外の様子を窺うと、ボードイン一家の邸宅から火の手が上がっているではないか。直ちに消防隊が呼ばれて消火作業に当たったが、火の勢いは凄まじく、全焼は免れなかった。
 まだ燻っている焼け跡から9つの遺体が発見された。母親とその子供たちである。

 シェリル・ボードイン(29)
 フレデリック・ボードイン(12)
 シャロン・リー・ボードイン(10)
 デブラ・アン・ボードイン(9)
 ポール・ボードイン(8)
 ロデリック・ボードイン(6)
 ホリー・リン・ボードイン(5)
 メアリー・ルー・ボードイン(4)
 ジェニファー・サントロ(6・シェリルの姪)

 ジェニファー・サントロはその日にたまたま預けられていたために巻き添えになったらしい。検視の結果、彼らはいずれも後ろ手に縛られて、頭を殴られていることが判明した。明らかな殺人事件である。

 疑いの目は当然ながら夫に向けられたが、彼にはアリバイがあった。間もなく聞き込みにより、もう一人の男が前日に家にいたことが判明した。夫の乳兄弟たるローン・アクウィン(27)である。彼を洗った警察は仰天した。強盗及び脱獄の前科があったのだ。この男の仕業と見て間違いないだろう。翌日にも出頭を求められたアクウィンは、一夜明けて自白した。一家を縛り上げ、タイヤレバーで殴り、ガソリンを撒いて火を放ったことを認めたのだ。

 動機は「義姉への欲情」だった。義姉を見ているうちにムラムラと欲情し、つい犯行に及んでしまったというのだ。誠に身勝手な男である。
 また、彼は法廷で10歳のシャロンへの性的な虐待もあったことを仄めかしている。それが本当なら、全く呆れた糞野郎だ。

 かくして9件の殺人と放火で有罪になったアクウィンは、それぞれの殺人につき25年から終身刑、放火については25年の刑が宣告された。

(2009年3月18日/岸田裁月) 


参考文献

『THE ENCYCLOPEDIA OF MASS MURDER』BRIAN LANE & WILFRED GREGG(HEADLINE)


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