デヴィッド・ゴア
フレッド・ウォーターフィールド

David Gore & Fred Waterfield (アメリカ)


 

 事件発覚の発端として、これほどキテレツな例も珍しい。お笑い業界で云うところの「出オチ」のような事件である。

 それは1983年7月26日のことだった。フロリダのヴェロ・ビーチで、自転車に乗っていた少年が信じられない光景で出くわした。全裸の少女が全裸の男に追い掛けられていたのである。しかも、唖然とする少年の眼の前で、男は少女に銃弾を浴びせたのだ。
 慌てて帰宅した少年が通報した頃には、警察は既に現場の住人からの通報を受けていた。通報者の名はデヴィッド・ゴア。強姦の前科がある男だった。

 現場に急行した警官は、路上の車中に遺棄されたリン・キャロル・エリオット(17)の遺体を発見した。無残にも頭を撃ち抜かれていた。
 通報者の家の中には、もう1人の少女がいた。14歳の彼女は全裸の上、両手首を縛られて、天井の梁から吊るされていたというから酷い話だ。
 下手人たるゴアは素直に降伏した。曰く、
「これは俺一人の仕業じゃない。従兄弟と共にやったことだ」
 その従兄弟たるフレッド・ウォーターフィールドも直ちに逮捕されたわけだが、彼はゴアとは異なり、犯行の一切を否認した。

 取調べにおいてゴアは余罪があることを仄めかし、司法取引を持ちかけた。
「死刑を求刑しないというのなら、すべてをお話しますよ」
 かくしてヴェロ・ビーチにおける連続強姦殺人の全容が明らかになった。被害者の氏名を順に列挙する。

 イン・フア・リン(17)
 ヒサン・フアン・リン(48・インの母親)
 ジュディス・ケイ・デイリー(35)
 アンジェリカ・ラヴァリー(14)
 バーバラ・バイヤー(14)

 ゴアは約束通りに、上の5件については死刑を求刑されなかった、だが、リン・キャロル・エリオットの件については司法取引はなされていない。故にこの件では死刑を求刑されて有罪となり、ゴアはその思惑に反して死刑を宣告されたのである。愚かなり。

 一方、相棒のウォーターフィールドは、リンの件では故殺罪に留まり、アンジェリカ・ラヴァリーとバーバラ・バイヤーの件でのみ謀殺と認定されて、終身刑を宣告された。

(2009年11月27日/岸田裁月) 


参考資料

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)


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