マイケル・ルーポ
Michael Lupo
a.k.a. Michele Lupo (イギリス)



マイケル・ルーポ

 1986年3月15日、ロンドンはケンジントンの廃屋でアレックス・カッソン(37)の遺体が発見された。死因は絞殺である。しかし、現場からはロクな証拠は見つからず、捜査は一向に進展しなかった。

 3週間後の4月6日、ロンドン南部ブリックストンの線路沿いの廃屋でアンソニー・コナリー(24)の遺体が発見された。彼は自らのスカーフで絞殺されていた。
 さて、ここで一つ問題が持ち上がる。検視官がその遺体を解剖することを拒絶したのだ。何故なら、コナリーの同居人がHIV陽性であることが判明したからだ。つまり、検視官が「感染する恐れがある」として拒絶したのである。今日では考えられないことだが、当時のエイズに対する世間の認識はこんなもんだったのだ。「触れただけで感染」する「ゲイ特有の病気」のように受け止められていたのである。
 この措置に対してゲイ社会が反発したことは云うまでもない。云ったれ云ったれ、もっと云ったれ。ゲイを差別するなと云ったれ。

 差別問題にまで発展した本件は、5月18日にマイケル・ルーポ(33)が逮捕されることで一応の決着を見た。
 イタリア生まれのルーポは、写真で見る限り「ウホッ!いい男」。やはりゲイで、自らを「ウルフマン」と称していた(ルーポとはイタリア語で狼を意味する)。愛した男は4000人と豪語していたという。そんな男がHIVに感染した。自棄のやん八やいゆえよ。それで殺人を犯したというわけだ。前記2人の他にもダミアン・マックラスキーと氏名不詳の浮浪者を殺害していた。

 かくしてルーポには終身刑が宣告されたが、間もなくエイズを発症し、1995年2月に死亡した。

(2009年11月30日/岸田裁月) 


参考資料

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)
http://en.wikipedia.org/wiki/Michael_Lupo


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