リチャード・ダッド
Richard Dadd (イギリス)



リチャード・ダッド

 リチャード・ダッドは1817年8月1日、ケント州チャタムで生まれた。幼い頃から絵を描き始め、20歳の時に王立芸術院に入学する。将来が期待される優秀な画家の卵だった。

 そんな彼がおかしくなったのは1842年7月から翌年にかけて、パトロンのトーマス・フィリップ卿の中東旅行に同行した時だった。ナイル川を蒸気船で観光している際に、自らをエジプトの神、オシリスの下僕であるとの妄想を抱き始めたのだ。統合失調症を発症したのである。

 帰国後、家族の勧めでケント州コバムで療養生活を送るが、ここで彼は殺人を犯す。1843年8月28日午後9時頃、公園を散歩中に父親のロバート・ダッドをナイフで刺し殺したのだ。
「今、目の前にいるのは、お前の父親に変装した悪魔だ」
 との神の声を聴いたからである。

 その後、パリに逃亡したダッドは、乗合馬車の中で観光客を殺そうとして逮捕された。言動は支離滅裂で、裁かれることなく精神病院に収容されて、翌1844年8月に祖国に引き渡された。王立ベスレム病院で20年過ごした後、ブロードムーアに移されて、そこで1886年1月8日に結核で死亡した。68歳だった。

 画家としてのダッドの代表作のほとんどは王立ベスレム病院で描かれたものである。故に彼こそがアウトサイダー・アートの元祖なのかも知れない。
 ちなみに、代表作の一つ『The Fairy Feller's Master-Stroke』はクイーンの楽曲のモチーフになっている(アルバム『Queen II 』所収)。

 註:アウトサイダー・アートは本来、芸術教育を受けていない者のアートを意味するので、リチャード・ダッドは厳密にはアウトサイダー・アートではない。しかし、精神障害者のアートという意味でアウトサイダー・アートに限りなく近い。

(2012年10月9日/岸田裁月) 


参考資料

http://www.murder-uk.com/
http://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Dadd
http://faerymists.tripod.com/fyart/daddbio.htm


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