1998年5月19日、テネシー州フェイエットヴィルでの出来事である。
3日後に卒業を控えていたリンカーン・カウンティー高校の生徒、ジェイコブ・デイヴィス(18)が学校の駐車場で、同級生のロバート・クレソン(通称ニック)を殺害した。動機は嫉妬だった。ニックがジェイコブの恋人、トーニャ・ビショップとデートを重ねていたのだ。
その日の午前中、ジェイコブはニックと云い争いをしていた。
「トーニャは俺のものだ! お前は手を出すな!」
「バーカ。トーニャの気持ちはお前からとっくに離れているんだよ!」
ってな感じだったのだと思う(違っていたらごめんなさい)。その後、ジェイコブは昼頃に車で自宅に戻り、22口径のライフルを手にすると学校に取って返した。そして、駐車場の車の中でニックが帰宅するのを待ち構えたのだ。
午後2時頃、ニックが駐車場に現れた。ジェイコブは車外に出て、ニックに目掛けて発砲した。しかし、それは当らなかった。ニックはライフルを構えるジェイコブに気づき、そして叫んだ。
「バカなことはやめろ!」
(Quit messing around !)
次の瞬間、2発目が発砲されて、ニックの胸に命中した。彼はその場に崩れ落ちた。ジェイコブは彼に近づくと、腹部に3発目を撃ち込んだ。
十数人の目撃者によれば、その間、ジェイコブは無言だったという。
ジェイコブの車の中からは遺書めいた2通の手紙が押収された。1通は両親に宛てたもので、これまで育ててくれたことに感謝する内容だった。もう1通はトーニャに宛てたもので、如何に自分が彼女のことを愛しているのかが滔々と綴られていた。また、トーニャとのツーショットの写真もいくつも押収されている。愛してたんだねえ。
かくして、ジェイコブ・デイヴィスは殺人容疑で有罪となり、終身刑が宣告された。その際に、少なくとも51年は釈放されるべきではないことが付言されている。
3日後に卒業で、これから新しい人生が待っていたというのに…。
二股かけるような女はしょーもないよ!
そんな女に人生をかけることはなかったのだよ!
(2013年1月5日/岸田裁月) |