トレヴァー・エドワーズ
Trevor John Edwards (イギリス)



 1928年6月17日早朝、ウェールズ南部ブリジェンドの警察署に一人の男が駆け込んで来て叫んだ。
「大変です! 首から血を流した男が街を彷徨い歩いています!」
 そりゃ大事だってんで、直ちに現場に駆けつけた警官たちはトレヴァー・エドワーズ(20)の身柄を取り押さえた。クムアマン出身の元炭坑夫である。
「いったい何があった!?」
「死に切れませんでした」
「ああ?」
「恋人を殺して、私も死のうとしたのですが、死に切れませんでした」
「何だって!? 恋人を殺したって!?」
 彼は素直に恋人の遺体がある場所に案内した。エルシー・クック(20)。同じ炭坑町の出身である彼女は、ビール瓶で頭を殴られ、剃刀で喉を切り裂かれていた。
「いったいどうしてこんなことを?」
「自分でもよく判りません。とにかく、何もかも嫌になりまして」

 エドワーズの動機は曖昧で、精神を患っているかに思われた。事実、彼の家族には精神疾患者が多く、父親は精神医療施設で死亡している。しかし、法廷では理路整然と犯行の過程を証言したため、正常と判断されて死刑を宣告された。

 1928年12月11日に執り行われた絞首刑にはちょっとしたハプニングがあった。処刑人のロバート・バクスターは仕事が速いことで知られていたのだが、助手のアルフレッド・アレンは初仕事で、そのことを知らなかった。そして、エドワーズの足を縛った後、もたもたしていたために一緒に処刑台から落下してしまったのだ。バクスターがちゃんと確認せずに落とし戸のレバーを引いてしまったのである。大事には至らなかったが、死刑執行人としては大失態であった。

(2012年10月9日/岸田裁月) 


参考資料

http://www.murder-uk.com/
http://en.wikipedia.org/wiki/Anthony_Miller_(murderer)
http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:hhMKMHnZPysJ:www.dailyrecord.co.uk/news/uk-world-news/scots-lawyer-on-case-that-convinced-him-1077575+James+Denovan,+Anthony+Miller&cd=2&hl=ja&ct=clnk&gl=jp


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