ジェイムス・グリーネイカー
サラ・ゲイル
James Greenacre
Sarah Gale (イギリス)



犯行の再現図

 1836年12月28日、ロンドンはエッジウェア・ロードの建築現場で、作業員が不審な布袋を発見した。中から血のようなものが染み出している。中身を確認したところ、頭と両脚が切断された中年女性の胴体が入っていた。
 翌1837年1月6日にはステップニーの運河で頭が、2月2日はブリクストンで両脚が発見された。これでパーツは一通り揃ったわけだが、その身元は杳として知れなかった。
 ちなみに、死因は後頭部への鈍器による一撃だった。

 3月20日、ようやく遺体の身元が割れた。ハンナ・ブラウン(47)。ユニオン・ストリートに住んでいた洗濯婦だ。身元を確認した親族によれば、彼女は昨年のクリスマスにジェイムス・グリーネイカー(52)という男と結婚し、アメリカに移住する予定だったという。ところが、それ以降は姿が見えなくなり、バラバラになって発見されたというわけだ。

 5日後の3月25日、グリーネイカーは愛人のサラ・ゲイル(35)と共に潜伏先の下宿で逮捕された。また、いくつものハンナの所持品も押収された。彼らの犯行と見てまず間違いないだろう。
 どうやら、グリーネイカーはハンナの財産目当てで求婚したようだ。ところが、結婚が近づくにつれて、彼女が云うほどの財産は持ち合わせていないことが判明した。そりゃそうだよ。洗濯婦だもん。高給を得られる職業ではない。騙すつもりが騙されてしまったのだな。そこでそのことを巡って口論となり、遂には木材で殴り殺してしまったというわけだ。

 一方、グリーネイカーは、泥酔したハンナが椅子ごと後ろにひっくり返り、頭を打って死亡したのだと弁明したが、それならばバラバラにして遺棄する必要はない。また、そもそもハンナは酒を一滴も飲めなかった。

 かくして、ハンナ・ブラウン殺害の容疑で有罪となったジェイムス・グリーネイカーは、死刑を宣告されて、1837年5月2日に処刑された。
 また、サラ・ゲイルも事後従犯の容疑で有罪となり、終身流罪を云い渡された。そして、1888年に流刑地のオーストラリアで死亡したようである。

(2012年10月12日/岸田裁月) 


参考資料

『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)
http://en.wikipedia.org/wiki/James_Greenacre
http://www.murder-uk.com/
http://www.exclassics.com/newgate/ng622.htm
http://en.wikisource.org/wiki/Greenacre,_James_(DNB00)


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