ジェイムス・ロバートソン
James Roland Robertson  (イギリス)



ジェイムス・ロバートソン

 1950年7月28日早朝、グラスゴーのプロスペクティル・ロードで、女性の遺体がタクシー運転手により発見された。当初は轢き逃げ事件かと思われていたが、検視解剖によれば、轢かれる前に後頭部を鈍器で殴打されているという。つまり、本件は明白な殺人事件である。
 間もなく遺体の身元が割れた。キャサリン・マクラスキー(40)。2人の子供の母親だが、結婚はしていなかった。

 やがて現場付近で乗り捨てられた車が発見された。登録者はジェイムス・ロバートソン(33)。職業はなんと巡査である。
 ロバートソンの供述は二転三転した。
 まず、彼は「車は盗まれた」のだと主張した。ところが、何故に盗難届を出さなかったのかと指摘されると、しどろもどろになりながら「自分で見つけたので盗難届は出さなかった」と弁明した…って、おい。ふりだしに戻っちゃったじゃないか。「自分は車を占有していなかったので、犯行とは関係ない」というのがお前の主張だったんじゃないんかい?

 数々の聞き込みから、被害者がロバートソンの愛人であることが判明していた。そのことを突きつけられると、彼は渋々ながらも2人目の子供の父親は自分であることを認めた。しかし、犯行への関与は否定した。
「あの晩、あの道で彼女を見かけたのは事実です。私は車を停めて、しばらく話しました。しかし、勤務中だったので、車には乗せませんでした」
 ところが、その晩はロバートソンは非番だった。その旨を指摘されると、彼はまたもや供述を変えた。
「彼女と別れた後、考え直して元の場所に戻りました。そして、その時にうっかりして彼女を車の下に巻き込んでしまったのです。前進後進を繰り返して、どうにか彼女を助け出した時には、既に死亡していました」
 いやいやいや。「前進後進を繰り返して」って。お前、明らかに轢き殺してるやないかい。

 警察官のクセにこれほど弁明がヘタな奴は初めてだ。かくして死刑を宣告されたロバートソンは、1950年12月16日に処刑された。

(2012年11月6日/岸田裁月) 


参考資料

『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)
http://www.murder-uk.com/
http://murderpedia.org/male.R/r/robertson-james-roland.htm


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