フランシス・スミス
Francis Smith
a.k.a. Hammersmith Ghost Murder Case (イギリス)



事件の再現図

 1803年12月、ロンドン西部のハマースミス墓地付近で幽霊騒動が持ち上がった。目撃された幽霊はあたかもKKKの白頭巾のような姿形で、やがて幽霊に追い掛けられたり、腕を掴まれたりする者までが現れた。或る老婦人などは幽霊に掴まれたショックで気を失い、回復することなく死んでしまった。噂では、喉を掻き切って自殺した男の幽霊だという。自殺者は天国に行けないので、こうして現世を彷徨っているというのだ。

 間もなく自警団が結成された。それほどに深刻な騒動だったのだな。今では考えられないことだが。
 1804年1月3日、ライフルで武装したフランシス・スミス(29)は、仲間たちと共に墓地付近を夜回りしていた。そして午後10時30分頃、彼のライフルが銃声を上げた。集まる仲間たちに彼は叫んだ。
「幽霊を射止めたぜ!」
 ところが、標的は幽霊ではなかった。埃除けの白い頭巾を被ったレンガ工、トーマス・ミルワードだったのである。

「幽霊だと思って撃ったら人間だった」という、とても珍しいケースである。今日ならば過失致死に問われるケースだと思うが、フランシス・スミスは殺人容疑で有罪となり、死刑を宣告された。但し、事情が斟酌されて、後に懲役1年に減刑されている。

 なお、ハマースミスを騒がせた幽霊の正体はジョン・グレアムというおっさんであることが今日では判明している。彼は己れの子供たちを幽霊話で怖がらせた連中への復讐として、シーツを被って幽霊を演じていたというのだが…いやはやなんとも、迷惑な話である。

(2012年11月10日/岸田裁月) 


参考資料

http://www.murder-uk.com/
http://en.wikipedia.org/wiki/Hammersmith_Ghost_murder_case
http://www.real-british-ghosts.com/hammersmith-ghost.html
http://www.indyrs.co.uk/?p=181


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