第23話 親子の絆

 又しゃぶ郎と雲国斎は7年ぶりの再会を果たした。
 長い間離れ離れになっていた二人の会話は、又しゃぶ郎の聞き違いや勘違いもあって噛み合わないものになってはいるものの、それでも、久しぶりの再会に親子の絆は深まって行くのであった。

「とにかく、そこに居るむしゃぶろうは私にとって憎き相手である。恨みは晴らさなければならない。又しゃぶ郎、助太刀いたせ!」。
「う〜ん、父の恨みは子の恨み。理由はともあれ、父上がそうおっしゃるのであれば、拙者微力ながら助太刀いたしまする」。
「よう言った、又しゃぶ郎。むしゃぶろうが出れぬよう、入り口の戸を閉めてしまえ」。
「はっ」。
 と、言うが早いか又しゃぶ郎は振り返り、入り口の木戸を閉めようとした。が、前述の通り木戸は古いままの状態で、スムーズには閉まらなかった。一瞬ガタッと引っ掛かった。
 むしゃぶろうの動きは俊敏である。むしゃぶろうはその一瞬の隙を見のがさず表に出てしまった。
「あっ!」。
 むしゃぶろうは足が速い。一度表に出てしまえば、もう捕まることはなかった。

 むしゃぶろうはまた一人になってしまった。
 森を抜ける道をとぼとぼと歩きながら思いをはせる。むしゃぶろうにとって、又しゃぶ郎は無二の親友と呼べるものであったし、唯一の理解者と言っても良かった。その又しゃぶ郎が、自分を裏切った。殺そうとした。いや、そこまでの行為とまでは言えないが、自分を殺そうとした者に対して、それを止めるどころか協力しようとしていたのは紛れも無いことである。むしゃぶろうはあらためて親子の絆について考えるのであった。
 むしゃぶろうとて人の子である。むしゃぶろうにも父はあったし、母もあった。
 でも彼らは自分を邪魔者にし、殺そうとまでした。
 むしゃぶろうはいたたまれず村を出たのであった。
「親友を裏切ることが出来るほど親子の絆は深いもの。しかし、その親にさえ裏切られた俺らは、どう生きれば良いのだろうか」。

 一陣の風がむしゃぶろうの前を吹きぬけた。
 ウサマビン・ラディンがそこに居た。

つづく