第28話 エピソード1「揉んでどうする〜その2」

「こいつは黙っていられねえぜ」
 辰五郎のパイオツという言葉を聞いて、いてもたってもいられなくなったむしゃぶろうは表へ飛び出した。
 小一時間ほど走り回ったが、町の様子はいつもと変わらず、オッパイを出している女もいなけりゃ、そのことを話題にしている者もいなかった。
 むしゃぶろうは家に帰った。
「おい、何が大変だよ。何がパイオツだよ。何も変わってねえじゃねえか」
 家に着くなりむしゃぶろうは辰五郎に詰め寄った。辰五郎は両手を合わせて謝りながらも言った。
「いや、でもね、話しは最後まで聞いてよ。あわてずに俺の話をよく聞いてよ。まずはさあ、まずはそこに座って」
「ああ、わかったよ。聞いてやるから早く話せ」
「大変なんだよ。大変なことが起こったんだよ」
「だから、そいつはなんなんだよ」
「パ、パイオツなんだよ」
「それも聞いたよ。パイオツがどうしたって言うんだ」
ふっくらなんだよ」
「なにが?」
ぷりん、ぷりんなんだよ」
「それだけじゃよくわかんねえぞ。落ち着いて話せ、な」
「これが落ち着いていられるかよ〜。谷間だよ〜、挟めるくらいの谷間なんだよ」
「谷間に挟む?」
「そう、パイ摺りだよ〜、パイ摺りできるよ〜」
「おお〜、パイ摺り〜!。こりゃだまっていられねえぜ〜」
 むしゃぶろうは裸足で表へ飛び出し・・・、
「ちょ、ちょ、ちょっと待っておくれよ。話は最後まで聞いてったら」
 むしゃぶろうは玄関の土間で立ち止まり振り返った。
「おい、辰。パイ摺りだろ?。ぷりんぷりんだろ?。だったらこの部屋にいたってしょうがねえじゃねえか。女のいるところに行かなきゃ」
「それがそうでねえんだよ」
「そうでねえって、お前さん変なこと言うね」
「表に出ることはないんだよ。この部屋にいておくれよ。ボインボインなんだから」
「なんだかわかんねえな、お前の言うことは。この部屋には俺とお前しかいねえじゃねえか」
「そうだよ。この部屋には兄貴とオイラしかいねえよ。・・・・・ねえ」
 辰五郎は胸元をはだけながらむしゃぶろうに近づいていった。
「ねえ。揉んでみなよ」
「あほか、お前の胸なんか揉んでどうすんだよ」
「いいから。俺の言ってることがわかるからさ」
 辰五郎はむしゃぶろうの手をとって自分の胸元に入れた。
 むしゃぶろうは飛び上がって驚いた。
「おお〜!。なんじゃこりゃ〜!」
「なあ、大変だろ。ぷりんぷりんだろ。挟めるほどあるだろ」
「お前、ど、どうして」
 辰五郎の胸はまるで若い女のそれであった。まさに乳房と呼べるほどに膨らんでいた。
 辰五郎の様子から見て、それはけっして彼の悪戯ではなさそうだ。一体辰五郎の身に何があったというのであろうか。

つづく