アパッチ砦・ブロンクス
FORT APACHE, THE BRONX

米 1981年 123分
監督 ダニエル・ペトリ
脚本: ヘイウッド・グールド
出演 ポール・ニューマン
   ケン・ウォール
   ダニー・アイエロ
   パム・グリア


 70年代後半から80年代にかけてのポール・ニューマンは全く冴えなかった。作品に恵まれないスランプ状態。80年に主演した『世界崩壊の序曲』が興行的にも作品的にも大失敗したのが痛かった。このままポール・ニューマンは消えてしまうのではないかと思われた。そんな時に主演したのが本作である。彼としては社会派のアクションドラマで再起を狙うつもりだったのだろう。しかし、出来上がったのは、なんだか訳の判らない分裂症気味の映画だった。

 内容は、一言で云えば『ダーティ・ハリー』+『セルピコ』+黒人映画。いずれも70年代初頭の映画であり、本作の時代遅れは一見にして明らかだ。
 ニューヨークはサウス・ブロンクス。ここは日常的に犯罪が横行する無法地帯だった。白昼堂々と二人の警官が射殺されても、目撃者は一人として現れない。業を煮やした署長は、怪しい者を一斉検挙するローラー作戦を実施するが、住民の暴動を呼ぶだけだった。しかも、暴動の最中に警官による民間人殺害事件が発生。現場を目撃したポール・ニューマン扮する真面目一筋の警官は、仲間を売るべきか否かを思い悩むが、恋人が死んだことを機に証言台に立つことを決意。と同時に、警察を辞職する。しかし、ひったくりを目撃して、これを元気に追いかけるのであった。ジ・エンド。

 私が「分裂症気味」といった意味がお判りであろうか。とにかく、物語がコロコロと行き当たりばったりに転がって、どこに行くのか判らない。しかも、途中で主筋とはあまり関係のない殺人事件やら人質事件やらが挿入される。二人の警官殺しも結局、解決されないで終わる。犯人はパム・グリアが演じる殺人狂の娼婦なのだが、彼女も途中であっさりと殺されてしまうのだ。最後にポール・ニューマンがはりきって窃盗犯人を逮捕するシーンでは、そのすぐそばに彼女の死体が捨てられている。作者はいったい何が云いたいのか?。私にはさっぱり判らない。
 要するに、社会派ドラマを作ろうとして、サウス・ブロンクスが抱える問題をすべてブチ込んだら底が破れた、ということなのだろう。ブロンクスでのロケ・シーンの出来がよいだけに、残念な作品である。

 ところで、ここでのパム・グリアの演技は絶品である。彼女を見るだけでも、この映画を見る価値がある。


関連人物

パム・グリア(PAM GRIER)


 

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