ハーレム街の首領
HELL UP IN HARLEM

米 1973年 95分
製作 ラリー・コーエン
監督 ラリー・コーエン
脚本 ラリー・コーエン
出演 フレッド・ウィリアムソン
   グロリア・ヘンドリー
   ジュリアス・W・ハリス
   トニー・キング


 主演のフレッド・ウィリアムソン、監督のラリー・コーエンの二人にとって出世作となった『BLACK CAESAR』の続編である。
 前作は日本未公開なので未見であるが、黒人ハーレムを舞台にした『ゴッドファーザー』のような映画らしい。鉄砲玉のウィリアムソンがハーレムのボスに成り上がって行く物語。その恋人役に「史上初の黒人ボンドガール」ことグロリア・ヘンドリーが扮している。
 今ではありがちな物語だが、ブラックスプロイテーション黎明期としては新鮮だったのだろう。予想外のヒットとなり、急遽続編が製作された。それが本作である。

 ラリー・コーエンはこの後に『悪魔の赤ちゃん』を発表。以降、ホラー路線を一直線に突き進むことになるので、出世作が黒人映画というのは意外だった。その興味から観たのであるが、これがもうてんでデタラメ。「奇想の作家」として知られるコーエンではあったが、ここまでデタラメだともはや弁護できない。かなりの高得点で「最低映画館」に殿堂入りする作品である。

 まず、冒頭。前作のヒロインだったグロリア・ヘンドリーがいきなり裏切り、そのために命を狙われる主人公。半死半生で親父のもとに逃げ込み、
「俺が回復するまで組のことを頼む」
 と、堅気の親父を極道へと引きずり込む。
『ゴッドファーザー』の逆パターンである。
 で、親父の意外な活躍に組はたちまち立ち直り、ショボクレ親父も今ではハーレムの顔役だ。親父にデカい顔されてはたまらないと、主人公は足を洗って楽隠居。ところが、親父が殺されたのを機に現場に復帰し、たった一人で組織に立ち向かうのであった.....。

 デタラメにもほどがある。
 コーエンの脚本はいつも「行き当たりばったり」の感があるが、本作がまさにその典型例。本当に思いつくままに書いたとしか思えない。

 なお、極道へと引きずり込まれる親父に扮するのは『007死ぬのは奴らだ』の義手の殺し屋、ジュリアス・W・ハリス。ハーレムの顔役になってからの貫禄はなかなかのもので、彼を見るだけでも本作を見る価値はある。


関連人物

ラリー・コーエン(LARRY COHEN)


 

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