アメリカの惨劇 188人を私刑した男
CONFESSIONS OF A SERIAL KILLER

米 1987年 107分
監督 マーク・ブレア
脚本 マーク・ブレア
出演 ロバート・A・バーンズ
   デニス・ヒル
   シドニー・ブラマー


 史上最悪の連続殺人鬼、ヘンリー・ルーカスの映画といえば『ヘンリー』があるので、こちらの方は忘れられがちである。しかし、こちらの方も悪くない。B級にしては上々の出来である。「どうせロクなもんじゃねえんだろうなあ」とナメてかかって観ていたら、ついつい引き込まれてしまった。

 前半は、正直云って退屈である。逮捕されたヘンリーが犯行を一つ一つ告白していくという構成で、「最後までこの調子だったらどうしよう」と不安になった。
 物語が動き始めるのは30分を過ぎてからだ。ヘンリーが被害者に逆襲される場面で、突如として見知らぬ男がバックシートから現れてヘンリーを救ってくれるのである。ここで初めて、ヘンリーには相棒がいたことが観客に明らかにされる。そして、この相棒がヘンリーを上回る鬼畜だということ、更にはその妹までもが仲間だったことが次第に明かされる。ヘンリー・ルーカスの事件を知る者には既知の事実であるが、語り口が巧妙なので新鮮である。

 恐ろしいのは、この3人が日常においてごく当たり前に人を殺す、ということである。例えば、買い物をして、財布を忘れたので店主を殺す。自動車が欲しいのでヒッチハイクをしてドライバーを殺す。まるでバイト感覚の殺人なのだ。否。ゲーム感覚と云うべきか。暇な時は通りすがりの少女を射殺するのだ(左写真上)。あたかも射的で遊ぶかのように。
 中でも飛び切り恐ろしいのは、2人の幼女を連れた夫婦を眺めながら交わされた会話である。
「お前、あの女とヤリたいだろ」。

「どの女だ?」。
 究極の鬼畜の会話であり、そんじょそこらのホラー映画なんかよりもよっぽど恐ろしい。真に恐ろしいのは歪んだ日常だということを思い知らされる1本である。


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