セダ・バラ
THEDA BARA
(1885-1955)

《主な出演作》
*愚者ありき(1914)
*カルメン(1915)
*ロミオとジュリエット(1916)
*クレオパトラ(1917)
*椿姫(1917)
*サロメ(1918)



当時としてはかなり過激なコスチューム

 ハリウッド最初のセックスシンボル、セダ・バラがデビューしたのは1914年のことである。フランク・パウエル監督『愚者ありき』で男どもを片っ端から破滅に陥れる悪女を演じ、「ヴァンプ」と呼ばれて人気を集めた。

 セダは完全に作り上げられた女優だった。本名はセオドシア・グッドマン。オハイオ出身のこのユダヤ娘は、いつの間にかフランス人とアラブ人との混血ということになっていた。その芸名は「ARAB DEATH」のアナグラムであり、彼女の私生活はその怪しげな名前と同様、謎に包まれていた。目鼻立ちを異常に強調したメイクのままで自宅とスタジオの間を往復した。もちろん、尾行されないように護衛付きだ。フォックス社が考え出した彼女のキャッチコピーが振るっている。
「セダ・バラ。50人の男を破滅させ、その家族150人を苦しめた女」

 セダはその後、クレオパトラやカルメン、サロメといった典型的毒婦を次々と演じた。また、映画会社も彼女に続くヴァンプ女優を続々と輩出した。やがて第一次大戦が終わり、狂騒の20年代が訪れると、スクリーンはまさにヴァンプ花盛りと化した。
 しかし、狂騒の20年代はスキャンダルの時代でもあった。ロスコー・アーバックルが強姦殺人事件に巻き込まれ、チャールズ・チャップリンが離婚訴訟に悩まされた。他にもメイベル・ノーマンド、メアリー・マイルズ・ミンター等、スキャンダルのために再起不能となったスターは数知れず。ハリウッドは「悪徳の都」の烙印を押され、映画会社は自粛を余儀なくされた。このような状況の中で、ヴァンプ映画は作られなくなっていく。


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