ハリー・ラングドン
HARRY LANGDON
(1884-1944)

《主な出演作》
*初陣ハリー(1926)
*当たりっ子ハリー(1926)
*岡惚れハリー(1927)
*初恋ハリイ(1927)
*女権拡張(1928)
*馬鹿騒ぎ(1928)
*禁酒天国(1930)


 ロスコー・アーバックルが例の事件で退いた後、入れ替わるようにして喜劇王に仲間入りしたのがこのハリー・ラングドンである。しかし、今日では彼の作品を観ることは難しい。その名を知る者も少ない。

「ベビーフェイス」の愛称で親しまれたラングドンは、これまでにないキャラクターで一世を風靡した。すなわち「こどもおとな」である。ハーポ・マルクスやローワン・アトキンソン扮する「ミスター・ビーン」の先駆と云えるが、ラングドンはハーポやビーンのように積極的に加害しない。いつの間にか加害してしまい、しかし、当人は気づかずにキョトンとしていることが殆どだ。その意味で、むしろジャック・タチの「ムッシュ・ユロ」や、ピーター・セラーズが『パーティー』で扮したインド人に近い。無垢だが、殺人的にドジなのである。


 このキャラクターの創造には、当時キーストンで脚本を担当していたフランク・キャプラが大きく貢献している。しかし、ラングトンは満足していなかった。彼はチャップリンのようなペーソス溢れる作品を撮りたかったのだ。独立した彼は自ら監督にも乗り出す。しかし、結果は惨憺たるものだった。フランク・キャプラ曰く、
「ラングドンは他の偉大なコメディアンとは異なり、どうして自分が受けたのかをよく理解していなかった」
 その後も死の直前まで我武者らに映画に出演し続けたラングドンだったが、かつての人気を取り戻すことは遂に出来なかった。


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