グロリア・スワンソン
GLORIA SWANSON
(1899-1983)

《主な出演作》
*チャップリンの役者(1915)
*夫を変へる勿れ(1919)
*男性と女性(1919)
*何故妻を換へる?(1920)
*アナトール(1921)
*巨巖の彼方(1922)
*舞姫ザザ(1923)
*ありし日のナポレオン(1925)
*港の女(1928)
*クイーン・ケリー(1928・未完)
*トレスパッサー(1929)
*陽気な後家さん(1930)
*サンセット大通り(1950)
*エアポート'75(1974)



『サンセット大通り』にて発狂するスワンソン

 グロリア・スワンソンの経歴を調べた上で観ると、『サンセット大通り』は思った以上に辛辣であることが判る。
 スワンソンの役柄はサイレント時代の大スター「ノーマ・デズモンド」。今ではすっかり忘れられて、サンセット大通りの廃墟のような屋敷でひっそりと暮らしている。そんな彼女が再帰を賭けて自作の脚本を売り込むのだが、その売り込み先がなんとあのセシル・B・デミル本人なのである。かつてスワンソンを自作のヒロインに抜擢し、大スターへと引き上げた張本人なのだ。つまり「ノーマ・デズモンド」とは、グロリア・スワンソンに他ならないのである。

 さらに辛辣なのが
「ノーマ・デズモンド」が往年の主演作を鑑賞するシーンだ。
「ほら、科白なんかなくても十分に素晴らしいでしょ?」
 とかなんとか云っているが、上映されているのは『クイーン・ケリー』。スワンソンのかつての愛人、ジョセフ・ケネディに頼んで出資させたものの製作打ち切りとなった問題作だ。しかも、監督のエリッヒ・フォン・シュトロハイムは「ノーマ・デズモンド」の召使い役で出演している…。
 ここまで辛辣だと、苦笑いを通り越して冷や汗が出る。

 スワンソンは1980年に出版された自伝の中で、ジョセフ・ケネディとの最初の情事(ほとんどレイプ)を暴露している。
「私が口を開く間もなく、彼の唇が私の唇に重なりました。私のからだを激しく撫で回し、服を脱がそうと必死です。『もう我慢できない。もう我慢できない』。まるでロープに繋がれてもがく馬のようでした。彼はすぐに絶頂に達すると、罪滅ぼし程度に何かしきりに囁いていました。しかし、心にしみるような言葉は何一つありませんでした」
「ケネディは親子そろって早漏」という風評を裏づける貴重な資料であるが、どうしてわざわざ暴露する?。どうしてわざわざ我が身を削る?。そんなに注目を浴びたいのか?。
 浴びたいのだろうなあ。スターとはそういうものなのだろうなあ。

『サンセット大通り』に続く2度目のカムバック作品『エアポート'75』では、今度は「ノーマ・デズモンド」ではなく「グロリア・スワンソン」本人として出演していた。いやあ、すごいぜ、スワンソン。あんたは本物の大スターだ。


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