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《復讐/運命の訪問者》の続編である。前作もかなり変な作品だったが、こちらはさらに変である。 妻を殺害された安城は、刑事を辞職し、今では復讐の鬼と化していた。直接手を下した殺し屋一味を皆殺しにするも、その背後にダム建設を巡る闇資金ルートがあることが判明する。一方、そのルートを追う若手刑事の西は、安城の復讐を阻止しようと躍起になる。 と、あらすじだけだとオーソドックスな復讐ものだが、黒沢清の力点はむしろ、サイドストーリーである筈の主人公と躁鬱症気味の組長の奇妙な友情物語に置かれているのである。しかも、その描写はだらだらとメリハリがない。だから、途中でいったい何の話やら、さっぱり判らなくなるのである。 「それまで僕は頑固なジャンル主義者で、構造は少し崩しても、ジャンルのスタイルを守ろうとした時期があった。(中略)ちょうどその頃、篠崎誠という友人が《おかえり》を撮って海外の映画祭で賞をとりまくった。青山真治という後輩が《Helpless》を撮って海外の映画祭に行ったというのを聞いて「あれ?。なんで?。どうして?」という思いが(笑)。篠崎の映画は特に「君、普段言ってることと全然違うじゃないか、やってることが!」(笑)。頭がいいというのはこういうことを言うかというのを目の当たりにしました。つまり彼らは、映画にジャンルがあることは充分わかりつつ、海外の人は今どきの日本映画にそんなものを望んでいない、ましてやアメリカ映画の古典的なスタイルなど求めてないことをちゃんと知っていた。そこで彼らはジャンルを取っ払い、今の日本にある日常的な空間や普通の人間の生活を積極的に取り組んだ。普段「そんなことはつまらない」って言ってたくせに何だ!(笑)。そこで僕も1回やってみようと思って。 なるほど。だから主人公と組長はあんなにだらだらしていたのか。 |