江戸川乱歩の一寸法師
ISSUN-BOUSHI

新東宝 1955年 84分 白黒
監督 内川清一郎
原作 江戸川乱歩
出演 二本柳寛
   三浦光子
   宇津井健
   和久井勉


 ガキの頃、夢中になったポプラ社の江戸川乱歩シリーズ。『少年探偵団』から始めて、『怪人二十面相』を経て、次第にハードなものに読み進む。そして、行き着いたのが『一寸法師』だった。もちろん、ポプラ社のやつは子供向けに書き直されたものだったが、それでも身震いするほど怖かった。
 やがて、成人ものに読み進んだ私は『陰獣』と『孤島の鬼』に完全にノックアウト。それでこんな人間になってしまったのであるが、やはり原点は『一寸法師』だ。真夜中に寸足らずの怪人が落としていった人間の腕。その腕が幼い私をあっちの世界に引きずり込んでしまったのである。

 本作は、その『一寸法師』の完全映画化である。なにしろ主演が本物の一寸法師なので、その怖さは折り紙付きだ。
 私が特に怯えたのは、一寸法師が正体を現すシーンである。妙に座高が高い男だなあと思っていると、実は一寸法師が立っていたのだ。
 一寸法師は普段は義足を履いて、「大男」として暮らしている。その「大男」が座ったと思っていたら、実は義足を脱いだだけだった。まだ立っていた、ということが判った時のショック。これは相当なものである。このシーンだけで私的には100点満点である。

 なお、一寸法師に扮した和久井勉は、本作を除けば、他に『女吸血鬼』しか出演作が見当たらない。本作のラストで電線をヒョイヒョイと伝わって逃走するスタントを見せてくれることから、おそらくサーカスの軽業師だったのではないだろうか?。いずれにしても、彼の存在なくしては本作は成立しない。小さくても、存在感は絶大である。


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