悪魔のシスター
SISTERS

米 1973年 92分
監督 ブライアン・デ・パルマ
脚本 ブライアン・デ・パルマ
   ルイザ・ローズ
音楽 バーナード・ハーマン
出演 マーゴット・キダー
   ジェニファー・ソルト
   ウィリアム・フィンレイ
   チャールズ・ダーニング


 巨匠ブライアン・デ・パルマの出世作であるこの映画、『エクソシスト』の後に公開されたので、なにやらオカルトもののような邦題をつけられてしまっているが、その実はヒッチコックへのレスペクト全開のサイコ・スリラーである。「第二のヒッチコック」と目されて久しいデ・パルマが今回挑んだのは『サイコ』+『裏窓』。音楽はもちろんバーナード・ハーマンだ。

 主人公のダニエラは黒人青年と一夜を共にする。しかし翌朝、青年はダニエラと瓜二つの女にナイフで惨殺されてしまう。その女はダニエラの妹のドミニクで、実は二人はシャム双生児として生まれて、1年前に手術で分離されたばかりだった。姉のダニエラは正常に育ったが、ドミニクは精神に異常を来しており、分離後も精神病院に隔離されていたのだ。
 ドミニクの犯行は向かいのアパートに住むグレイスに目撃されていた。彼女は慌てて警察を呼ぶが、現場に立ち入った時には死体は既に片付けられた後だった。ダニエラの主治医が隠蔽してしまったのである。グレイスは警察から「あんた、夢でも見たんじゃないか?」となじられる始末。頭にきたグレイスは独自に捜査を始める。そして、恐るべき全貌を知ると同時に、彼女の身にも毒牙が襲いかかるのであった。


 ここからはネタバレ。
 実はドミニクは手術の際に死亡してしまっており、生き残ったダニエラはその罪悪感から、ドミニクの人格を内に造り出していた。そして、快楽を貪った相手をドミニクの人格で殺害したのである。
 これ、まさに『サイコ』の変化球だよね。

 なかなか面白い物語なのだが、如何せん、穴があり過ぎる。
 最大の穴は、目撃者のグレイスが最後までドミニクの存在を信じていることだろう。グレイスは「ダニエラと瓜二つの女」の殺人を目撃した。ならば、犯人はダニエラだと疑うのが筋である。しかし、彼女は「犯人はダニエラと雰囲気が違っていた」という理由だけで、ダニエラには双児の姉妹がいて、それが犯人ではないかと疑うのである。観ているこちらはシャム双生児の話であることを承知しているので、グレイスのこの思い込みには寛容になれるが、シビアに考えればプロット自体が破綻している。

 それでも、こうした論理的な穴に眼をつぶれば、本作はかなり楽しめる作品に仕上がっている。特に終盤での「シャム双生児分離手術」の幻想シーン(左写真)には圧倒される。キチガイやフリークスに囲まれる中で肉切り包丁が振り降ろされる描写は、子供が観たならばトラウマになること必至だ。
 かく云う私が少年期に観て、しっかりトラウマになりました。


 

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