ブレア・ウィッチ・プロジェクト
THE BLAIR WITCH PROJECT

米 1999年 81分
監督 ダニエル・マイリック
   エドゥアルド・サンチェス
出演 ヘザー・ドナヒュー
   マイケル・C・ウィリアムズ
   ジョシュア・レナード


 劇場で観るよりも、DVDで観ることが本作の正しい鑑賞法であろう。というのも、DVDには宣伝用に製作された「ブレアの魔女」に関する擬似ドキュメンタリーも収録されていて、これと本編を共に鑑賞することで初めて、この作品の真価が判るからである。

 とりあえず、本編の解説をしておこう。
「失踪した撮影隊が残したフィルムを編集した」という触れ込みのこの作品は、おそらく史上最も金のかかっていない映画だろう。記録メディアはビデオと16㎜カメラだけ。セット撮影もなく、出演者も3人のみ。本当に現像代しか元手がかかっていない映画である。
 3人の男女が、大学の卒業作品として「ブレアの魔女」をテーマにしたドキュメンタリーを製作する。
「ブレアの魔女」とは、この地に200年前に住んでいた魔女のことで、住民が寄ってたかってリンチにしたのが祟って、様々な災いを齎している。一番新しい災いは50年前に起きた幼児連続殺人事件。犯人は処刑されたが、どうやら魔女の怨霊に唆されて犯行に及んだようだ。近年でも霊的な目撃例は後を絶たない。
 過去の災いが起きた現場を取材するうちに一行は、やがて何者かに見張られていることに気づく。不気味なイタズラが続き、そして、樹海のような森の中で道に迷ってしまう。半狂乱になった一行は、やがて朽ち果てた廃屋を発見する。そこには.....!。

 と、まあ、だいたいこんなあらすじだが、実際に観てみると実にたわいがない。3人の男女が森の中をウロウロするだけ。道に迷ったのはお前のせいだッ、いや違うッ、いいやそうだッ、ってな内輪喧嘩を1時間も見せられたのでは気が滅入る。
 むしろ、この作品の真価は秀逸な宣伝方法にこそある。「ブレアの魔女」の物語をさも実話のように偽り、本当の失踪事件であるかのように宣伝したのである。その手法は60年代から70年代にかけて一世を風靡した「モンド映画」のそれであり、私の第一印象は、
「『食人族』のリメイクだな、こりゃ」
 このような作品なわけだから、本編よりも宣伝用に作られた擬似ドキュメンタリーの方が、よっぽど面白いのである。

 と、ここまでの文章は『ブレアウィッチ』のDVD発売直後に書いたものである。その後に『ブレアウィッチ2』なる続編が発表されたので、それについても触れておきたい。

 この続編の宣伝に際しても、疑似ドキュメンタリーが製作された。タイトルは『バーキッツヴィル7』で、今度は50年前にこの地で起こった幼児連続殺人事件にスポットを当てた、なかなか見ごたえがあるものであった。

 しかし、肝心の本編には呆れてしまった。完全なる劇映画だったである。これまでこのシリーズが積み上げてきた「壮大なる嘘」を台無しにしてしまったのだ。映画の出来不出来を論じる以前の問題だ。これほど製作者の意図が判らない映画も珍しい。
(というか、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』自体がまぐれ当たりだったような気がする。DVD収録のインタビューで監督が「今度はコメディを撮りたい」と真顔で云っていたのには「こいつはひょっとしたらバカなのでは?」と疑っていたが、やっぱりバカだったようだ)。


 

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