続・世界残酷物語
MONDO CANE NO.2

伊 1963年 76分
監督 グァルティエロ・ヤコペッティ
音楽 リズ・オルトラーニ


 本作は実は、ヤコペッティが交通事故で入院中に共同製作者と助監督が勝手にデッチ上げたものなのだそうだ。ヤコペッティが撮りためていたフィルムも使われているが、多くのシーンはノータッチとのこと。だから、ヤコペッティの作品として評価してはいけないのかも知れない。
 しかし、ナレーション台本を書いたのはヤコペッティ本人であるし、監督としてクレジットすることも了承しているので「事後承諾の監督作」ということでいいのではないか?。

 ヤコペッティの手から離れたせいか、本作は一連の作品の中でもっともモンドでキッチュである。「やらせ」もかなりあくどい。
 最後を飾る「人間打楽器」を例に挙げよう。
 千人は観客がいようかというコンサート・ホール。ピアノの伴奏にあわせて、7人の男たちがビンタされる。彼らは背の高い順に並び、最後の男はなんと小人だ。一曲が終わると、男たちは鼻血をたらして悲惨な形相。眼鏡が割れてしまった者もいる。しかし、感動した観客はアンコールを望み、また一曲が始められる。あまりの辛さに涙を流す小人のアップで映画はFINE。一緒に見ていた母親は、
「叩く人も痛いよねえ」
 との感想をもらしていたが、いやいや、これはやらせですよ、おかあさま。


 更にあくどいのが「サイゴンでの僧侶の焼身自殺」である。
 事件が現実にあったことは確かである。63年6月11日、ティック・クァン・ドゥックという僧侶が、政府の仏教徒に対する不当な扱いに対して抗議するために焼身自殺している。その写真は全世界に報道されたので見たことのある方も多いだろう。
 私もその写真を見ていたので、当初はその現場を撮影したものだと思っていた。ところが、写真とフィルムを見比べてみると、明らかに背景が異なる。つまり、この映画のそれは「再現フィルム」なのである。事件を聞きつけたスタッフは、早々に現地に赴き、事件を再現して撮影したのだ。一般の自殺ならともかく、政治的自殺を再現するとはいい度胸をしている。
 それを、事後承諾とはいえ、己れの作品として発表したヤコペッティも、いい度胸をしている。
こうした度胸のよさが、続く問題作『さらばアフリカ』の布石となるのだろう。


関連人物

グァルティエロ・ヤコペッティ(GUALTIERO JACOPETTI)


 

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