いろいろと謎の多い映画である。
まず、製作国がよく判らない。我が国での公開当時は「イタリア」ということであったが、IMDbによれば「アメリカ」だ。一方「allcinema ONLINE」では「アメリカ=イタリア=日本」の合作ということになっている。
この謎を解く鍵は『映画秘宝/日常洋画劇場』(洋泉社刊)「安達かおるインタビュー」の中にあった。
藤木「80年になると劇場用で『ジャンク/死と惨劇』を作られますよね。テレキ
ャス・ジャパンがお金を出して作った。イタリアのプロダクションが作った
ことになってるんですよね」
安達「いやいや、アメリカですよ。アメリカのっていうこともないんですが、あれ
は、フェイス・オブ・デス(FOD)プロダクションっていう、まったく架
空のプロダクションをでっち上げた」
藤木「えっ!。『キネ旬』で見るとイタリアのFODプロダクションって書いてあ
りましたが」
安達「あ、それイタリアじゃないですね。間違いですね。アメリカです。あれ作っ
たのは僕なんですけどね。そのFODプロダクションっていうのは、向こう
にゴールドキーっていうラボやってる男がいたんですよ。そいつと一緒にや
った。で、あんな映画、日本で作ったら価値が下がるし、台湾とかにも輸出
できないんで、アメリカ映画にしたんですよ。向こうが言うには、俺はこん
なもんに手を染めたら名誉が落ちる、と。じゃあ、なんかプロダクション作
ろうよ、っていってFODっていうのを作ったんですよね」
藤木「勝手にでっち上げて」
安達「そうそう。向こうに本拠地だけ置いて」
というわけで「実質=日本、形式=アメリカ」が正解だったのだ。イタリア関係ねえじゃん。
そんないい加減な映画であるわけだから、監督としてクレジットされている「コナン・ル・シレール」も実在しないのかと思われたが、IMDbで調べたら、なんと実在していた。本名は「ジョン・アラン・シュワルツ」で、本作の脚本家「アラン・ブラック」も彼の変名である。安達氏の云う「ゴールドキーってラボやってる男」がその人なのかも知れないが、真相は安達氏に訊かないと判らない。
要するに、出所をこれだけあやふやにしておかないと、これほど不謹慎な映画は作れない、ということなのだろう。
|