ザ・グリード
DEEP RISING

米 1998年 107分
監督 スティーヴン・ソマーズ
脚本 スティーヴン・ソマーズ
出演 トリート・ウィリアムズ
   ファムケ・ヤンセン
   ケヴィン・J・オコナー
   ウナ・デーモン
   アンソニー・ヒールド
   ウェス・ステューディ
   ジェイソン・フレミング


 これはちょっとバカにしながら観た映画。
「東宝東和の配給だし、だまされたと思って観てやっか」
 ってな高慢な態度で観たんだな。ところが、これが面白いのなんの。怪獣ものも馬鹿にできねえ、あなどれねえと唸らされた1本であった。

 物語は極めて単純。タイタニック号を連想させる豪華客船の金銀財宝を狙うテロリストたち。密輸船をチャーターして海上を襲うが、船の中は藻抜けのカラ。謎の深海怪獣に襲われた後だったのだ.....。
 さあ、それからはテロリストたちと怪獣の追いかけっこが始まるわけだが、これがもうメチャクチャ面白い。
「私、B級映画です。B級の神髄をお楽しみ下さい」
 とばかりに、適度の悪趣味とユーモアを交えて、どんどこどんどこ突き進む。最初から最後までダレ場のない107分。そして、終わって、
「ああ、面白かった。久々に映画らしい映画を観たなあ」
 映画って、本来これでいいんだよね?。所詮、娯楽なんだから。


 しかし、誤解のなきよう敢えて云うが、怪獣とのノンストップ追っかけっこだけではここまで面白くならないのだ。ここが怪獣マニアが陥りやすい罠なのだが、いくら怪獣が魅力的でも、襲われる人間たちに魅力がなければ、決して面白くはならない。
 その点、本作では登場人物たちが実に魅力的に描かれている。キャラの立っていない登場人物はいない、と断言できるほどだ。
 まず、主役の密輸船の船長はインディ・ジョーンズを連想させる行動派のニヒリスト(演じるのは『ゾンビ・コップ』のトリート・ウィリアムズ)。
 その相棒がお調子者のバカ野郎と、お転婆の韓国娘。
 テロリストの頭目が何故かチェロキー・インディアンのウェス・ステューディってのも味のある配役。一味の中には『URAMI』の仮面男、ジェイソン・フレミングもいたりして、後半で怪物に踊り喰いされる(上写真)。
 で、この映画の真の悪役はテロリストではなくて、この船のオーナー。故意に船を沈没させて保険金の詐取を目論む。
 これに峰不二子のような女怪盗(演じるのは『007ゴールデン・アイ』でブレイクしたファムケ・ヤンセン)が絡むという至れり尽くせりの布陣である。

 なお、監督・脚本のスティーヴン・ソマーズは、本作での腕前が評価されて『ハムナプトラ』に抜擢された。あれも娯楽の王道を行く映画だったが、私はこっちの方が好きだ。


 

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