ホーンティング
THE HAUNTING
米 1999年 113分
監督 ヤン・デ・ボン
出演 リーアム・ニーソン
リリ・テイラー
キャサリン・ゼタ・ジョーンズ
オーウェン・ウィルソン
ブルース・ダーン
まず、本作のオリジナルである『たたり』は映画史に残る傑作であることをここに明言しておこう。幽霊屋敷の物語でありながら、主役の幽霊を決して画面に映すことなく、しかし、音響効果とカメラワークだけでその存在を描き切る演出手腕はただものではない。さすが名匠ロバート・ワイズである。
然るに、我らがボンクラ、ヤン・デ・ボンがリメイクで何をやったかと云うと、CGでもって幽霊をドンドコ登場させてしまったのである。おかげでまったく怖くない恐怖映画に仕上がった。
あのなあ、デ・ボンさんよ。ワイズ先生が幽霊を画面に映さなかったのは、そうしてしまうと興醒めなことを知っていたからなのだよ。「怪奇探偵」の小池壮彦氏もこのように述べている。
「幽霊の顔がクッキリ写っている心霊写真というのは、白昼の路上を堂々とハダカで歩いていれば男が寄ってくると思っている女性と同じくらいの勘違いである」
あんたの勘違いがまさにこれだ(註1)。
ところで、この映画にはややこしい類似作品があるので、ここでキチンと整理しておこう。
まず、オリジナルの『たたり』は、シャーリー・ジャクソンの『山荘綺談』の映画化で、原題は「THE HAUNTING」。心霊現象を証明しようと試みる人類学者が、評判の幽霊屋敷に二人の女性霊能者を従えて投宿する物語。
で、これのリメイクが本作『ホーンティング』。学者の目的は「恐怖実験」に改悪されている。
ややこしいのはこれからだ。
本作とほぼ同時期に公開された『TATARI』。私、こちらの方を『たたり』のリメイクと勘違いしちゃったのだが、実はこれはウィリアム・キャッスルが59年に製作した『地獄へつづく部屋』のリメイクなのだ(原題は「HOUSE ON HAUNTED HILL」)。
同様に幽霊屋敷を舞台にした物語だが、キャッスルのオリジナルの方は、実は遺産相続を巡る大芝居だったというオチがつく。それに対してリメイクは、本当の幽霊屋敷でしたあという物語。『たたり』とそっくりで、それで『TATARI』なのだから、ややこしいことこの上ない。
しかし『TATARI』の方が本作よりチープだが、まだ面白い。キャッスルとヴィンセント・プライスのファンならかなり楽しめる。
とにかく、上に掲げた4作の中で最下位に位置するのが本作であることは間違いない。一番金かけてるんだけどね。
註1 幽霊を見せるにしても「見せ方」というものがあり、それをいろいろと積極的に試みているのが黒沢清や中田秀夫、清水祟らの「Jホラー」とか云われているジャンルである。
↑最後に大物が出て来るが、大きければいいというものではない。
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