悪魔の儀式
SEASON OF THE WITCH
JACK'S WIFE
HUNGRY WIVES

米 1972年 89分
製作 ナンシー・M・ロメロ
監督 ジョージ・A・ロメロ
脚本 ジョージ・A・ロメロ
出演 ジャン・ホワイト
   レイ・レイン
   ジョエッタ・マクレイン
   アン・マフィ


 この映画を誉めている人にはお目にかかったことがない。あの『ゾンビ』の監督の作品ということで、多くの人が期待して観たが、その期待のすべてがうっちゃられた。ボロカスに腐す人もいる。
 しかし、だからこそ、私は敢えて誉めてみようと思う。

 もっとも、現在我々が観られるのは短縮バージョンなので、これで評価してはいけないのかも知れない。『ジャックズ・ワイフ』のタイトルで公開されたオリジナルは2時間10分もあったのだ。
「エッ、1時間半でも十分に退屈なのに、この上、40分も長かったのッ!」
 などと驚いてはいけない。(今、資料を見て、この私が驚いた)
 ひょっとしたら、例えば、青山真治の『ユリイカ』のように「長過ぎること」が監督の意図だったのかも知れないじゃないか。

 配給会社の御機嫌を損ねて、40分もカットされて『飢えた人妻たち』という煽情的なタイトルで再公開されたこの映画は、退屈な日々を送る或る人妻のやるせない日常を綴った「女性映画」である。
 当時の「ウーマン・リブ」の盛り上がりを意識していることは明らかで、キャッチーな作品であったのだ。
 で、私は敢えて、こう読んだのである。
「専業主婦の退屈な日常を告発するために、退屈な作品に仕上げたのではないだろうか?」と。
 つまり、観客は「専業主婦の退屈な日常」を、本作を見ることで疑似体験するのである。それで、
「ああ、退屈な映画やったなあ。俺のカミさんも、いつもあんなに退屈なんかなあ?。そりゃアカンなあ。なんとかせななあ。あっ、そういえばアイツ、働きに出たいって云うとったなあ。この映画みたいに魔女になって、不倫されるよりマシやなあ。せや。カミさんに云うたろ。働きにでてもええよって」
 と洗脳するプロパガンダだったのではないだろうか?。
 本作の製作者は監督の妻なので、この解釈はあながち「深読み」とは云えない(註1)。

 とにかく、恐ろしく退屈な映画であるが、オープニングの夢のシーン、これだけは一見の価値がある。夫が新聞を読みながら林を歩くと、無言で連れ添う妻の顔に枝がバンバン当って傷だらけになる、というベタな描写は70年代のアングラ感覚満点で(左写真)、このシーンだけは100点満点である。

註1 深読みであることは、筆者は十分過ぎるほど認識している。


関連人物

ジョージ・A・ロメロ(GEORGE A. ROMERO)


 

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