ハンニバル 米 2001年 131分 |
原作を読んだ私は 「こりゃパロディだな」と思った。オチがあまりにもアレだったからだ。クラリスがレクター博士に洗脳されて、「食人夫婦」になってメデタシメデタシ、ってなオチなのだ。 だから、レクター博士もストーカー並みの体たらくだ。圧巻だったのが、クラリスの乗用車に入り込み、その匂いを満喫し、ハンドルをベロベロ舐めまわるシーンである。いくら変態のレクター博士とはいえ「それをやっちゃあおしまいよ」ってな迷場面だ。原作を読んだ当時は随分と驚いたもんだが、今思うに、舐めたかったのはハリス自身なのである。(このシーンは一応撮影されたが、最終的にカットされた。当たり前である)。 ベストセラーになった『FBI心理分析官』によれば、『羊たちの沈黙』にあったような連続殺人犯との1対1の尋問は、現在ではありえないのだそうだ。極めて危険な行為だからである。ましてや、男対女ならばなおさらだ。そんな禁忌を破ってドラマチックな物語を構築した『羊たちの沈黙』の作者自身が狂気に負けた。(しかも、その狂気がストーカー並みの安っぽさ)。それを超大作として映画化するディノ・デ・ラウレンティス御大。『羊たちの沈黙』の前作である『レッド・ドラゴン』の再映画化が控えているそうだが、『キングコング2』の二の舞いを踏まないよう、注意して欲しいもんである(註1)。 註1 観た。マイケル・マンの『刑事グラハム』よりはよく出来ていたが(マンのバージョンでは、レッド・ドラゴンの絵を食べるシーンが省かれていた)、あの取ってつけたエンディングは矛盾だらけだ。 |