サイコ3/怨霊の囁き 米 1986年 98分 |
『サイコ』は私にとってオールタイム・ベストなので、『サイコ2』が作られるのは堪らなく嫌だった。前作を凌ぐ作品が出来るわけがない。『サイコ』は巨匠アルフレッド・ヒッチコックにとっても奇跡的な作品だったのだ。ロバート・ブロックの優れた原作。ジョゼフ・ステファーノのトリッキーな脚色。アンソニー・パーキンスとジャネット・リー、そしてマーティン・バルサムの名演。バーナード・ハーマンの信じられないほど素晴らしい音楽。仕上げとして巨匠自らが知恵を絞った宣伝。これらのいずれの要素が欠けても『サイコ』は生まれなかった。そんな作品の続編を、しかもヒッチコック以外の人物が作ろうとは。これを冒涜と呼ばずして何と呼ぼう。 ところが、『サイコ2』は意外とイケたのだよ、これが。 そして、前作に変わらぬ、いや、それ以上のアンソニー・パーキンスの名演技。これほどまで役に同化した人がいまだかつていただろうか?。鬼気迫るとは正にこのことを云うのだろう。パーキンスの存在が『サイコ』の続編を作るという暴挙を正当化した、と云っても過言ではない。 |
で、『サイコ3』である。 物語は前作の終わりから始まる。実の母親だと称する老婆の訪問を受けたノーマンは、彼女を殺害し、再び剥製にして昔の生活に戻って行った。そんな時、かつてシャワールームで殺したマリオン・クレインとそっくりな女がベイツ・モーテルに宿泊する。母親は命じる。あんな淫売は殺してしまえッ。女装したノーマンは再びシャワールームで彼女を襲う。ナイフをかまえてカーテンをガラッと開けると、なんと、彼女は手首を切って自殺しようとしていた.....。 『サイコ3』はどうして、こんなブザマな作品に仕上がったのか?。 やがて、彼はエイズに冒される。死期を悟った彼が、今度は真摯な態度で臨んだのが『サイコ4』である。生涯の大役ノーマン・ベイツに決着をつけるべく、物語を犯行前の少年時代に遡らせて、その精神分析を徹底的に試みている。映画としては面白味に欠けるが(だからTVMとして製作された)、『サイコ4』をもってパーキンスのノーマン・ベイツは完結した。彼の生前に完結できたことは、ファンとしては喜ばしい限りである。 |
備考 |
この後に『サイコ』をリメイクしているバカがいるが、こういうのは無視する。『サイコ』のリメイクなど存在しない。しないと云ったらしないのだ。 |