女囚映画
WOMEN IN PRISON MOVIE


『残酷女刑務所』で一つ文章を書こうと思ったけれども、どうも面白いものが書けそうにない。そこで「女囚映画」として一括りにすることにした。
 どうして面白いものが書けそうにないのかというと、私の文才のなさもあるのだが、それよりもなによりも、この手の映画は中身がみんな同じなのだ。何を書いても同じになってしまう。
 前半は残酷な拷問とリンチの数々。中盤で誰かがセックスして、後半は女囚たちの叛乱と脱獄。判で押したかのように、どれもまるで同じなのだ。
「食人映画」の方がもう少しバラエティに富んでいる。
 こんな不毛のジャンルであるにも拘わらず、今日もなお根強い人気を誇る由縁は「悲しき男の性」。女を蹂躙し、責め苛む快楽を知った時からボンクラどもは「女囚映画」にうつつを抜かすのであった。

 で、そんな「女囚映画」のプロトタイプを確立した記念すべき作品が、前述の『残酷女刑務所』(71年)である。カルト女優パム・グリアの実質的デビュー作として知られる本作は、ジャック・ヒル監督のテンポのいい演出が奏功して、ロジャー・コーマン率いるニュー・ワールド初の大ヒットとなった。

 大喜びしたコーマンは早速ヒルに続編を撮らせた。『ビッグ・バード・ケイジ』(72年)がそれだが、出来は前作には及ばなかった。
 コーマン曰く、
「ヒルが乗り気じゃなかったんだ。そりゃそうだよなあ。まったく同じ映画をもう一度作るんだから」
 なんだ。判ってるんだ。
 判っているクセにコーマンは、夢よ再びとばかりに『女刑務所/白昼の暴動』(74年)を製作。監督はジョンサン・デミであった。


 かくしてロジャー・コーマンが放った3本の「女囚映画」が世界に波及し、数多の亜流作が量産されることになる。日本に渡れば、それは『女囚さそり』となり、イタリアに渡れば、それは「ナチ収容所もの」と形を変える。

 ところが、意外にも「ナチ収容所もの」を最初に製作したのはアメリカだった。『ナチ女収容所/悪魔の生体実験』(74年)がそれだ。残忍な女所長イルザにダイアン・ソーンを配したことで、「女囚映画」はここに完成を見る。以上に紹介した作品以外は見る価値がほとんどない。ほんとうにまったく同じ内容だからだ。

 ただ、ダイアン・ソーンが主演する「イルザ・シリーズ」3部作は見ておいて損はないだろう。
 2作目の『アラブ女地獄/悪魔のハーレム』(76年)では色キチ酋長のハーレム隊長。前半は例の如く非道の限りを尽くすが、後半で二枚目とセックスして真実の愛に目覚め、寝返って酋長を退治するも、自身は肥えだめに突き落とされてチョン。
 3作目の『シベリア女収容所/悪魔のリンチ集団』(77年)では帝政ロシアの収容所所長。ラストでシベリア平原に置き去りにされて、札束を燃やして暖を取る彼女の姿が圧倒的だった。

 やはり「女囚映画」は、ダイアン・ソーンに匹敵するほどに立ったキャラクターが存在しないと成功しない。

 その意味で83年の『チェーンヒート』は「女囚映画」最後の傑作であろう。リンダ・ブレア、ステラ・スティーブンス、ヘンリー・シルヴァ、シビル・ダニング、タマラ・ドブソンと怪優ぞろいで、これくらいに濃いキャスティングでないと「女囚映画」は楽しめない。
 なにしろみんな同じなのだから。


備考

 ダイアン・ソーンにはもう1本『女体拷問人グレタ』があるが、これはジェス・フランコが監督した西ドイツ製のバッタもんで、正式なイルザ・シリーズではない。しかし、輸入DVDのタイトルは『ILSA, THE WICKED WARDEN』で、ややこしいことこの上ない。


 

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