ゴッグ
GOG

英 1953年 85分
製作 アイヴァン・トアース
監督 ハーバート・L・ストロック
出演 リチャード・イーガン
   コンスタンス・ダウリング


 50年代に量産されたSF映画の中でも、かなりまともな作品である。宇宙ステーション研究開発施設のコンピューターが発狂し、研究員たちを殺害し始める、という内容は大人の鑑賞に十分に耐え得るものだし、その原因が敵対する某国の陰謀だという設定もハードだ。
 科学的な小道具もデタラメではない。「事務机の操縦席」というような『月のキャットウーマン』にあったような陳腐な描写もなく、真空管を用いた原始的コンピューターや、当時はまだ珍しかったロボットハンドの映像には、むしろ史料的価値すらある。
 にも拘わらず、私が本作を「最低映画」とするのは何故か?。まともながらも、ところどころに変な描写があるからである。


 映画の前半は、大英帝国の科学技術が如何に優れているかの自慢に割かれているのであるが、この部分に変な描写が集中する。
 例えば、太陽光線を用いた兵器を紹介するシーン。外にある巨大な鏡で太陽光線を集めて、これを小さな鏡に反射させて、レーザー光線のように照射するのであるが、
「鉄も溶かすんですよ」。
 とかいいながら、机の上にある鉄を溶かす。私は科学には詳しくはないけれど、鉄が溶けるのならば机も溶けてしまうと思うのだが.....。
 で、今度は都市の模型を持って来て、ビル群に照射して丸焼けにする。
「ほら、2万人の命が失われてしまいました」。
 そう云うけど、実際に燃えているのは模型なのだよ。
「海はどうでしょうか?。ほら、この通り。あっという間に蒸発してしまいます」。
 だけど、蒸発したのは模型の海だ。本物のビル群を焼き払い、海を蒸発させるためには、それこそ呆れるほど大きな鏡が必要だと思うのだが.....。

 それから、宇宙服による訓練のシーン(左写真)。
「この服を着ると身軽になります」。
 とか云うのだけれど、訓練中のこの二人、どう見てもサーカスの軽業師なのだ。女を持ち上げたり、宙に飛ばしたりと、とても宇宙旅行に必要な訓練だとは思えない。しかも、芸の後、二人でポーズをとったりする。

 他にも素人の眼で見てもおかしなシーンが散見される。「と学会」で詳しく検証してもらいたい作品である。


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