惑星からの侵略
WILD, WILD PLANET

伊 1965年 96分
監督 アンソニー・ドーソン
出演 トニー・ラッセル
   リザ・ガストーニ
   マッシモ・セラート
   フランコ・ネロ


 アンソニー・ドーソンと云えば、知る人ぞ知るマカロニB級SF&ホラーの巨匠である。ホラーでは『顔のない殺人鬼』が、SFでは本編が代表作か。パステルカラーで彩 られた流線形の未来風景が実に心地よく、気分はすっかり大阪万国博覧会である。本作を見たスタンリー・キューブリックが『2001年宇宙の旅』を撮る際に、ドーソンをアドバイザーとして呼び寄せたと伝えられているが、なるほど、それに価するだけのいい仕事をしている。
 しかし、物語の方はというと、これが実にどうも、テケレッツのパアなのである。

(ちなみに、上のジャケット絵はデタラメ。宇宙銃撃戦もなければ、宇宙船爆破もない。光線銃を持ったビキニのおねえちゃんも登場しない。騙されてはいけない)


 時は2015年。宇宙ステーションでは住人が次々と行方不明になる事件が頻発。調査に乗り出した主人公は、4本の腕を持つハゲの合成人間が、住人をミニチュアにして誘拐していることを突き止める。そして、誘拐先の惑星に渡った主人公は、そこでキチガイ博士と対面することになる。
 邦題から宇宙人による侵略SFかと思ったが、その実は「007のSF版」であった。キチガイ博士のアジトが「惑星」ではなく「ジャマイカ」だったら『ドクター・ノー』と区別がつかない内容だ。
 で、キチガイ博士の目的は、誘拐してきたサンプルから「完璧な合成人間」(当時はクローンという言葉はない)を作って宇宙を支配しようというもので、これなんかも『ムーンレイカー』によく似ている。


 しかし、誘拐のために放った刺客がどうして4本腕でなければならないのか、どうしてミニチュアにしなければならないのかの説明は一切なく、思いつきで撮ったとしか思えない。
(キチガイ博士は「人間をミニチュア化するのに20年もかかったんだ」と力説するが、意味不明なことに20年もかけた彼がキチガイにしか見えない、ってキチガイ博士だから別にいいのか)
 それで、最後は博士のアジトが爆破されて終わり。これも007とまったく同じである。

 前半はパステル・カラーの万博SF。後半は畸形人間とはらわたが飛び交うグロテスク・ホラー。全体のトーンはスパイ映画という、一粒で三度おいしい、実に変な映画なのであった。


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