ザ・ダーク
THE DARK

米 1979年 90分 カラー
製作 ディック・クラーク
   エドワード・L・モントロ
監督 ジョン・バッド・カードス
出演 ウィリアム・ディヴェン
   キャシー・リー・クロスビー
   キーナン・ウィン
   ジャクリン・ハイド
   リチャード・ジャッケル


 

 私はこの『ザ・ダーク』のような映画を「最後で台無し」と呼んでいる。つまり「最後で今までの物語を台無しにしてしまう映画」の意味だ。東京12チャンネルの『金曜スペシャル』で予告編を見て「面白そうだな」と思った私は、東劇までロードショーを観に行って、ラストで椅子から転げ落ちてしまった。

 ロサンゼルスで怪事件が発生している。深夜に何者かが一人歩きの女性を狙って殺害し、これを焼き払っているのだ。当然に刑事は変質者の犯行を考える。映画前半は陰気な刑事ドラマに終止する。
 しかし、後半で物語は豹変する。浮浪者のような風貌をした長身の魔物が、両眼から放つ怪光線で「人間狩り」をしていることが判明する。この魔物の正体は?。そしてその目的は?。以上の謎の解明が映画後半の観客の興味の対象となる。ところが、この映画の作り手は「実は宇宙人でしたあ」で終わりにしてしまう。彼がなぜ地球にやってきて、なぜ浮浪者の格好をして、なぜ人間狩りを始めたのかの説明は一切ない。驚いてしまう。
「実は宇宙人」は「夢オチ」と並ぶ禁じ手である。

 この映画、当初は「浮浪者による連続殺人」の物語だったらしい。ところが、撮影半ばで『エイリアン』が大当り。そこで侵略SFものに内容が変更されたという、なんとも情けないシロモノで、こんな映画をロードショーで観てしまった我が身を恨む。

 なお、当初の監督は『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパーだったが、製作者と意見があわず、僅か3日でジョン・バッド・カードスというダメ監督に交替された、という曰くつきの作品でもある。


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