バトル・ビヨンド・ザ・サン
BATTLE BEYOND THE SUN

米 1963年 75分
監督 トーマス・コルチャート
出演 エド・ペリー
   アーラ・パウエル


 この映画、ちょっとスゴいよ。
 何がスゴいかというとこの映画、クレジットがまるでデタラメなのだよ。トーマス・コルチャートなんて監督や、エド・ペリー、アーラ・パウエルなんて俳優は実在しない。そもそも、これはアメリカ映画なんかじゃない。我が国でも『大宇宙基地』のタイトルで公開された、60年製作のソビエト映画なのだ。
 では、いったい誰がこんなことを仕掛けたのか?。
 最低映画館御常連なればだいたいはお判りであろう。
 その通り。ロジャー・コーマン御大である。
 コーマンは、組合に属しない若手を抜擢した安物映画の製作者として知られているが、海外作品の配給にも積極的だった。そして、それがイマイチだった場合、脚本を書き換えて、追加シーンを撮影し再編集して、まったく別の映画として公開した。本作がまさにその典型例である。


 本作の本来のプロットは、ソビエト映画だから当り前なのだが、ソビエトがアメリカの宇宙船を救出するというものだったらしい。しかし、これではアメリカ市場に売り込めないと考えたコーマンは、アメリカとソビエトが協力して危機から脱出する物語に変更した上に、怪獣バトルを追加撮影して、これをメインに据えた。
 しかも、この怪獣デザインが「わざわざ」だ。ほとんど大人のオモチャなのだよ。1匹は男の方が楽しむやつ。もう1匹は女の方が楽しむやつ。(しかも、こいつの口がわざわざ小陰唇のような形をしている)。いくらコーマンとはいえ、これはちょっとやりすぎだろう。

 なお、追加シーンの撮影と再編集を担当したのは、食えない頃のフランシス・フォード・コッポラ。大人のオモチャ怪獣に関してコーマンとコッポラは、互いに「あいつのデザインだ」と云い張っているそうだ。


備考

 本作の本当のタイトルとクレジットを付記しておこう。

大宇宙基地
NEBO ZOVYOT

ソビエト 1960年
製作 T・クリチッカヤ
監督 ミハイル・カリューコフ
   アレクサンドル・コズィリ
出演 イワン・ペレウェルゼフ
   アレキサンドル・シュウォーリン


関連人物

ロジャー・コーマン


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