不良姐御伝/猪の鹿お蝶

日 1973年 88分
監督 鈴木則文
出演 池玲子
   クリスチナ・リンドバーグ


「ポルノ」という日本語を定着させたのは東映だそうである。日本映画界全体の斜陽の中で活路を見い出すべくポルノ路線へとシフトした当時の東映の二枚看板は池玲子杉本美樹。この二人が交代で、時には共演して東映を大映のように潰さないために頑張った。しかし二人だけでは限界がある。そこで海外から助っ人が呼ばれた。それがサンドラ・ジュリアンであり、クリスチナ・リンドバーグであり、シャロン・ケリーであったのだ。遂には巨根男優ハリー・リームスまで呼ばれたのだから、岡田社長は藁にもすがる心境だったのだろう。

 やがて、角川春樹という男が日本映画界の救世主として現れた。アーウィン・アレンに習ったと思われる超豪華キャストの大作主義で映画界に活力を与えたのである。呼ぶのもハリー・リームスなどではなくオリビア・ハッセーやジョージ・ケネディだ。「映画と宣伝に金をかけ、原作本を売って元を取る」というタイアップ方式も斬新だった。
 たしかに、角川春樹は崩壊寸前の日本映画界を救った。しかし、大作主義の下では失敗を恐れるあまりに冒険が出来なくなった。大人から子供まで、万人に受ける企画しか通らなくなり、どんどんとつまらなくなっていった。まさに「ラスト・アクション・ヒーロー症候群」である。怪作、奇作が作られることはなくなった。そのようなものをマメに作っていたのは、にっかつだけになってしまった。
 また、大作主義の下では新人監督が育たない。今日の日本を代表する監督の多くがロマンポルノ出身なのはそういうわけだ。にっかつだけが新人監督を育てられたのである。

 健全な世の中も結構だが、社会がちゃんと機能するためには『徳川セックス禁止令/色情大名 』のような映画も必要なのである。覚えておきなさい。


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