スリーズマニア
Sleazemania

米 1985年 60分
ライノ・ビデオ
製作 ジョニー・レジェンド


 

「SLEAZY」を辞書で引くと「安っぽい」と書かれているが、それ以上に猥雑なニュアンスが含まれているように思われる。例えば、場末のストリップを「It's Sleazy」と揶揄するのを聞いたことがあるが、とにかく、そうした「場末の猥雑な安っぽさ」が「SLEAZY」なのだろう。大蔵映画の一連の作品が「SLEAZY」であり、それはまた当最低映画館の目指すところでもある。
 そんな「SLEAZY」な映像群をこれでもかっと見せつけてくれるのがこのビデオである。編者は『バトル・オブ・ザ・ボムス』のジョニー・レジェンドで、そのチョイスは適格だ。主にセクスプロイテーションの予告編で構成されており、場末感覚を満喫させてくれる。

 特に印象に残るのが冒頭の「ヒプノヴィスタ」である(写真上)。心理学者を名乗る男が登場し「画期的な方法を開発しました」と告知する。それが「ヒプノヴィスタ」である。要するに、この方法を用いると「客席にいながらにして映画の中で起ったことを体感できる」のだそうだ。なんだか『ケンタッキー・フライド・ムービー』の「感じる映画」みたいだ。
「それでは、一例をお見せしましょう」
 と心理学者は、隣の女性の右手に針を差す。しかし、女性はヘラヘラしながら「ファイン、サンキュー」。
「これが暗示の力です。それでは、みなさんにも暗示を与えます。観たことを感じなさい!」。
「ヒプノヴィスタ」の正体は、単なる暗示であった。

 これに続く予告編群は、知っているのは『マリファナ』『死霊の盆踊り』ぐらいで、本当に見たことも聞いたこともないようなものばかり。いずれも猥雑で、この上なく安っぽい。中でも特に印象に残るのが『ヤング・セデューサーズ』という作品である。タイトル部分に恥毛のアップがどーんっと来る(写真中)。テレビ画面だとどうってことないが、映画館の大スクリーンではさぞかし迫力があったことだろう。

 こうした予告編の他にも、ストリップの「ニッケル・オデリン」だとか、幕間の宣伝だとかの、今となっては貴重な映像で楽しませてくれるが、中でも特に興味深いのが「モンスターには住むべき場所がある」と強調するCMである(写真下)。
「あなたの悪夢。深海。そして、あなたの好きな怪奇映画。でも、ケーブルTVは違います。ケーブルTVの中のモンスターに餌を与えてはいけません。ケーブルTVの会社は、あなたが今ただで見ている放送をも有料にしようと企んでいるのです」
 つまりこれは、ケーブルTVの台頭に恐れをなした地方テレビ局による「ケーブルTV撲滅キャンペーン」なのである。おそらく70年代の初め頃のことだと思われるが、80年代に入ってレンタルビデオが台頭した時も同じようなキャンペーンをしたのだろうか?