バッド・テイスト
BAD TASTE
ニュージーランド 1987年 99分
監督 ピーター・ジャクソン
出演 ピーター・ジャクソン
テリー・ポッター
マイク・ミネット
ピート・オハーン
クレイグ・スミス
『ロード・オブ・ザ・リング』の大成功で、今や最も注目される監督となったピーター・ジャクソンのデビュー作である。5年もの歳月を費やした自主製作映画で、一見にして明らかな「無予算」だが、既に「ジャクソン節」が完成していることが判る。畳み掛けるようなスピーディーな展開。それを支える巧みな編集。過剰なまでのサービス精神。初めて観た時はあまりにも面白いので驚いた。塚本晋也の『鉄男』を観た時にも痛感したのだが、自主製作でもやればできるのだ。才能と溢れんばかりの熱意さえあれば、例え「無予算」でも素晴らしい映画を作ることができるのである。
金ばかりかけてロクな映画を作らない連中は、本作を見習うべきである。
それほどの傑作がどうして「最低映画」に選ばれたかというと、本作、とにかく汚いのだ。「バッド・テイスト=悪趣味」というタイトルはまさに打ってつけだ。脳みそがグチャリと潰れ、それをスプーンで喰うオープニングを始めとして、はらわたがベロッと飛び出すわ、目玉がビョコンと飛び出すは、挙げ句の果てはゲロまで喰う。
圧巻なのは、監督自らが演じる気狂い男である。崖から堕ちて後頭部を打ち、脳みそがはみ出してしまう。それを慌てて拾って、頭の中にネジ込むのである。
こうしたグロテスクで汚い描写が、ギャグとして次々に登場する。赤塚不二夫やモンティパイソンで育った世代としては大満足だが、ブラックユーモアを解さない人にとっては、少々どころか、大いに食傷気味だろう。
ジャクソン監督は新聞社でバイトしながら、給料の全てを注ぎ込んで、毎週日曜日の撮影をコツコツと続けて、遂に完成させたという。新聞配達のバイトをしながら、セットに寝泊まりして『イレイザー・ヘッド』を完成させたデヴィッド・リンチとダブるエピソードである。やはり異端の才能は、こうした苦労をしなければ芽が出ないのであるなあ。
しかし、リンチもジャクソンも奨励金の援助を得たからこそ完成させることができたのであり、恵まれていたと云わざるを得ない。
我が国には奨励金のシステムはないからね。
だから、我が国の自主製作監督の方が苦労人なのだと思う。(現実に塚本晋也の『鉄男』は、出演者4人の同居+バイトという激貧の中で製作されている)。
いずれにしても、素晴らしい映画を作るのは熱意なのだ、ということを思い知らされる1本である。
↑こんなシーンばっかり。
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