アーネスト・ローズ
Ernest Rhodes (イギリス)



犯行の再現図

 アーネスト・ローズ(18)はロンドン在住の映画俳優、F・ダラス・ケアンズの付き人だった。彼の同僚たちはこの若者のオツムが些かイカレていることに気づいていた。というのも、前年の9月9日に愛人殺しの罪で処刑されたパトリック・マーンを英雄視していたのだ。また、近頃は婚約者殺しの容疑で逮捕されたノーマン・ソーンを英雄視していた。共に身勝手な理由で女性を殺害し、バラバラに切り刻んだ人でなしである。マトモな人間が英雄視する連中ではない。

 思うに、ローズには「女性を殺して切り刻みたい」というオブセッションがあったのだろう。だからこそ、それを現実に行ったマーンやソーンに敬意を抱いていたのである。そして、彼らのようになりたいと切実に願ったのだ。

 彼の願いが叶ったのはソーンが処刑される12日前、1925年4月10日のことである。その日の晩、グレース・ブラッカラー(16)という可憐な踊り子とデートをしたローズは、彼女を自宅まで送り届け、お別れのキッスをした直後にカミソリで彼女の喉を切り裂いたのだ。
 翌朝、ローズは警察署に出頭し、犯行を告白した。その時にはグレースは既に死亡していた。

 当時の新聞には、彼女と別れる際に、
「馬鹿な男ね。私があなたを愛しているとでも思ってるの?」
(You poor fool. What makes you think I could love you ?)
 と嘲笑されたことが犯行の動機と書かれているが、これはちょっとありえない。何故なら、ローズはカミソリを持っていたからだ。デートにカミソリを持参する者はまずいない。故に計画的な犯行だったと見るべきだろう。そして、オブセッションに囚われての犯行だったわけだから、動機などないのだ。ただ殺したかっただけなのだ。

 結局、アーネスト・ローズは「有罪だが精神異常」と評決されて、精神医療施設に収容された。その後のことは判らない。

(2012年11月5日/岸田裁月) 


参考資料

http://www.murder-uk.com/
http://www.britishmurders.co.uk/murder-content.php?key=6951&name=Ernest%20Rhodes
http://news.google.com/newspapers?nid=1368&dat=19250517&id=mNI_AAAAIBAJ&sjid=Kg8EAAAAIBAJ&pg=4751,3781800


BACK