オペラ座・血の喝采
OPERA

伊 1988年 95分
監督 ダリオ・アルジェント
脚本 ダリオ・アルジェント
出演 クリスティナ・マルシラック
   ウルバノ・バルベリーニ
   イアン・チャールソン
   ダリア・ニコロディ


 初めてこれを観た時の感想は「ナンデスカコレハ?」。先日改めて観てもやっぱり「ナンデスカコレハ?」。アルジェント作品に論理は期待していないが、ここまでワケが判らないとふんぞり返ってスッポコピーのピーなのである(←大いに呆れ返っていることの一表現)。

 いろいろとツッコむべきところは多いが、突出しているのが第3第4の殺人シーンである。
 猟奇変態殺人鬼につけ狙われるヒロインは、身内が2人も殺されてるってえのに「刑事です」の言葉を信じて、顔もロクに見ずにそいつを部屋に入れてしまう。ありえねえ。ありえねえが、まあ、アルジェント的にはOKとしよう。
 そこにヒロインのマネージャー(ダリア・ニコロディ)がやって来て、
「その刑事ならマンションの下にいたわよ」
「じゃ、居間にいるのは誰?」
 ってことでパニックに陥る二人。ビビりながらも居間に行くと誰もいない。すると呼び鈴がなる。
「開けろ。刑事だ」
「信用できないわ」
 マネージャーがドア越しに覗くと、いきなり拳銃が撃ち込まれる。覗き穴を銃弾が突き抜けるさまが超クローズアップのスローモーションで映し出されるが、ここまでする意味があるのか疑問である。疑問であるが、アルジェント的にはこれもOKといえよう。
 というわけで、外の刑事は偽者で、中の刑事が本物だったわけだが、本物は何処に行ったんだ?。ウンコか?、と思っていたら、しばらくして腹を刺されてヨロヨロと出て来る。銃声がしたんだから、その時に出て来いよ。やっぱりウンコしてたか?。急いでケツ拭いて出てきたところをグサリか?。
 そして、最後にとどめの一撃。追い詰められたヒロインがガクガクブルブル震えていると、唐突に見知らぬ少女が現れてヒロインを逃がしてくれるのである。お前は座敷童子か?。

 最後の座敷童子はあまりにも唐突で、アルジェント的にもNGであるが、実はノーカット版(12分長い)では唐突ではないのだそうだ。この少女、実は隣に住む商売女の娘で、この母子の関係がヒロインが抱えるトラウマの伏線になっているんだと。そんな大事なシーンをカットするなよな。アルジェントが映画会社を目の敵にする理由がよく判る。しかし、例えノーカットであったとしても、ダメな印象はあまり変わらないような気もする。

 この他にも「カラスがどうして犯人を狙うと判るんだ?」とか「そもそも何でこいつが犯人なんだ?」とか、疑問質問クエスチョンが山のように積み上げられて、何のカタルシスもなくブチッと終わる。ノーカット版ではヒロインがトラウマから解放されたことを暗示するシーンが最後にあるのだそうだが、どうでもいいや、そんなこと。全体の歪みや軋みはそんなことでは到底回復できない。それくらいワケが判らない作品である。


関連人物

ダリオ・アルジェント(DARIO ARGENTO)


 

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