デビルズ・ゾーン
TOURIST TRAP

米 1979年 92分
製作総指揮 チャールズ・バンド
監督 デヴィッド・シュモーラー
脚本 デヴィッド・シュモーラー
   J・ラリー・カーロル
出演 チャック・コナーズ
   タニア・ロバーツ


 後にスティーヴン・キングが絶賛したために一躍カルト化した本作、公開当初の評価は芳しくなかった。『悪魔のいけにえ』の亜流作だと思われていたからだ。だから、私も気にも止めずに未見のままだったのだが、DVD化されたのを機に見て驚いた。マネキンのグロテスクを描くことのみを追求した実験映画だったのだ。無節操な若者が旅先で一人また一人と殺されて…というスラッシャー・フィルム定石の物語なんぞに監督は興味がない。にも拘わらず、商業映画として成立させるために、已むなくスラッシャー・フィルムに仕立てている。そんな印象だ。『悪魔のいけにえ』のような手に汗を握る恐怖はここにはない。しかし、不気味さにおいては比肩する出来栄である。


 バカンスに出掛けた5人の男女、ふとした切っ掛けで立ち寄ったロウ人形館で不気味な館主と出会う…というところまでは定石通りだが、ここから趣きを異にする。飾られているロウ人形やマネキンの眼が動き、口が開き、遂には歩き出すのだ。なんと館主は超能力者で、念力でマネキンを動かして若者たちを血祭りに上げていたのである。
 この「超能力」の部分が公開時には「ズルい」とか「反則」とか叩かれた。曰く「相手が万能の超能力者では、主人公が逃げ切れるかどうかのサスペンスなど生まれない」。
 しかし、シュモーラー監督が描きたかったのは「動くマネキン」なのであって、超能力の設定は必然なのだ。この設定でなければ、この映画は成立しないのだ。
 このあたりの作り手と観客のズレが、本作が興業的に失敗した原因だろう。

 なお、デヴィッド・シュモーラーはこの後、同様にフェティッシュな『クロールスペース』を撮っているが、やはりストーリー展開に失敗している。発想はいいのだが、いつも詰めが甘い。彼に必要なのは優れたストーリー・アドバイザーなのだと思う。


関連作品

クロールスペース(CRAWLSPACE)


 

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